無理やりの縁談
「ルシア、ちょっとお兄ちゃんたちはたーーいせつなお話をしててな!お茶どころじゃないんだが・・・」と、ハーバートが苦笑する。
「ルシア殿!」と、その時、遠くから声がした。一行がそちらを向く。アルハザード王の声だった。
ルシアが、ハーバートの後ろに隠れる。
「アルハザード殿下、失礼ですが、おひきとりを!」と、ハーバートがむっとなって言った。求婚を断り続けて半年にもなる。6番目の妃など、妾という意味に等しい。そんなところに、ルシアを嫁がせるものか、と、ハーバートが怒るのも当然だった。
「私は、未来が見える少女の力がほしいのだよ、ハーバート殿!なに、悪い目には会わせない、どうだ、ルシア殿、私と一緒に・・・」と、アルハザード王が近づいてきて、手を取ろうとするので、事情を知っているクラウスが、剣を懐から抜き、すらりとした刀身をきらめかせ、アルハザード王に向ける。
「殿下、大変無礼ですが、俺を倒してから言って下さい。6番目の妃など、趣味が悪いですよ」と、クラウスがアルハザードをけん制する。
「ほう、若者よ、クラウス殿・・・だったかな??いくら王族同士といえど、この私に剣を向けるとは、勇気あるものよ!本当にやるのか?勝てるとでも思ってるのか??」と、アルハザード。
クラウスがひやりと冷や汗をかく。アルハザードは、上古のエルフの中で、剣術一位と言われているほど、武力に長けた恐ろしい王なのだ。
クラウス・・・だって県の腕前は相当なものだ。だが、アルハザードの出した殺気に、クラウスは勝てる気が失せるのを感じた。それでも、剣は突き出したままだ。
「ハーバート、」と、ジラルドがこっそりハーバートに耳うちした。
「本当に、悪魔の力が必要なようだな」と、ジラルド。
「待て!!」と、その時声がした。ローデヴェイクだ。彼も事情をまあまあ知っている。
「アルハザード王、俺とも勝負してください!俺は死んでも負けません!!」と、ローデヴェイクが言った。
「ロディ!!」と、ルシアが愛称で珍しく人前で呼んだ。
「分かった分かった、今日のところは引いてやる、若者たちよ」と、アルハザードが、二人から剣を向けられて言った。
「だが、ルシア殿、この縁談については、よく考えておくように」と、アルハザードが言って、家来とともに去って行った。
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