悪魔との契約

「俺とお茶しない?兄上様と一緒でもいいからさ!」と、クラウスが言った。

「じゃあ、兄と一緒でお願いします」と、ルシアが微笑んで言った。

「ありがとう!」と、国防長官の一人になっていたクラウスが言った。

 二人で、廊下を歩き、ハーバートの姿を探す。ルシアとハーバートの部屋には、いないだろう、とルシアが言った。ウルドの勘だそうだ。その言葉に、クラウスはぷっと笑いを隠せなかった。


                    *


「じゃあ、ジラルドさん、俺にも悪魔と契約する方法を、いつか教えてくれませんか。ルシアを、ウルドとしての役割から解放してあげたいんです」と、ハーバート。

「俺みたいに、永遠の命を投げ出しても・・・??エルフは人間と違って体が強いから、100年やそこらで死んだりはしないが、それでも永遠の命は捨てることになるぞ。悪魔との契約は、代償を伴う」と、ジラルドが警告する。

「妹さんも、ウルドとしての役割を楽しんでいるように見えますよ。このままでいいんじゃないですか」と、ジラルドが言った。

「それが、最近、アルハザードという、オーデル王の親戚の、武力に長けた将軍みたいな人・・・あんたも知ってるかもだが、その人が、ルシアを狙っててな。ぜひとも結婚したい、5番目の妃に、と何度も求婚してくる。年の差もすごいし、ルシアは嫌がってる。だが、親父の年齢ではなかなか追い払えないし、困ってるんだ。俺に悪魔の力があるなら、求婚も跳ね返せる」と、ハーバート。

「なるほどねえ・・・・」と、ジラルド。

「確かに、悪魔の力を持つ者は、一般的に怖がられることも多いし、悪魔の力の呪いをかけられることを恐れ、近付かなくなる人も多い。それで、か・・・・」と、ジラルドが考え込む。

「ちょっと、悪魔がなにって??お兄ちゃん、悪魔にでもなるの??」と、ルシアの声がした。

 気配がしなかったので、ジラルドとハーバートはぎょっとした。

 すっかり会話に夢中になっていたのだ。

「ほほう、兄君は、悪魔と契約する気、なのかな・・・??」と、クラウスが興味深そうに言う。

「ちょっと!!俺らの話を盗み聞きしないでください!!」と、ハーバートが笑いそうになりながら言う。

「お兄ちゃん、クラウスさんが、お茶したいって。お兄ちゃんと、ジラルドさんもどう??」と、ルシア。



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