第4話 縁側にて
「晶がお友達連れてくるなんて初めてよね〜!」
夕飯は豪盛だった。横峯の祖母は唐揚げや生姜焼き、お刺身の造り、スパゲティなどを次々にテーブルに置いていく。横峯の祖父母の家は昔ながらの木造家屋で、その家にふさわしい低い立派な木製の低い机が食台だった。
「豪華ですね……!」
「おばあちゃん張り切っちゃったわよ〜」
その時、ガラガラと玄関扉を開く音がした。
「おじゃましまーす、誠也だよ〜」
「おっ来たか」
横峯の祖父が相好を崩す。
「遅かったな、誠也!」
「いや〜渋滞に巻き込まれちゃってさ〜」
ロン毛のイケメンが入ってくる。手には一升瓶。
「お酒買ってきたから一緒に飲も〜」
「よしよし」
ニコニコしながら座席に座る誠也さん。
「あれ、この子どなた?」
「晶の友達よぉ」
「へー! 友達連れてくるなんて初じゃん」
「はじめまして、立花悠と申します」
「わぉ、なんて丁寧な挨拶なんだ」
誠也さんはにこっとして言った。
「僕は飯塚誠也。よろしくね」
縁側で夜風に当たっていると、隣に誰かがやってきた。見ると誠也さんである。
「今日は来てくれてありがとうね」
「いえ、前触れなくお邪魔しちゃって、すみません」
「いえいえ。晶、君にすごく心を許してるみたい」
「そう……かもしれません」
「もしかして君、晶の恋人?」
「え」
俺は思わずまじまじと誠也さんを見た。涼しげな目元につんと尖った鼻筋、優しげなカーブを描く唇。目以外は横峯とパーツがどことなく似ている。親戚なんだなと思った。
「……そうです。横峯からなんか聞いてました?」
「いや、なんとなくね。晶から男の子が好きだとは聞いてたし。……君みたいないい子とやっと付き合えたみたいでよかった」
「……そうなんですね」
星空に目を転じる。落ちてきそうなくらい星々が輝いている。
「……前の恋人のこと、何か聞いてますか」
「あぁ、岩田君ね。聞いてる。ひどい人だったみたい」
「どんな」
「晶が本気なのを知ってて、はぐらかしてセフレみたいに接してたみたい。不誠実な人だよ」
「それは……酷いですね」
「それに加えて、晶はどちらかと言うと自分の性向を隠す人だからね。胸を張って自己表現しにくいことが、彼を苦しめている」
誠也さんはつと僕のほうを見た。
「だからね、悠君。彼を解放してあげてほしいんだ。ちゃんと自分のことを話せるように、君はできるだけ胸を張っていてほしい。決して恥じないでいてほしいんだよ」
誠也さんの目は真剣だった。僕は息を呑んだ。
「できるかな」
「……はい。正直僕は、そういったことに関心がなかったんです。オープンでいるとか、クローズでいるかとか。でもそれは慢心でした。きちんと自己表現するようにします。それで横峯ものびのびとしていられるようになるのだったら、なおさら」
「そう。君は君自身のために、堂々としていてね。……ありがとう、悠君」
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