5 ふた昔前の中学生
イカれた仲間を紹介するぜ!
植物型宇宙人その1、植木松之助!
植物型宇宙人その2、谷りと!
SF大好きオタクちゃん、中島レモン!
そして僕、蓮沼一人! 以上だぜ!
いやなんなんだこれ、ちくわ大明神かよ。
◇◇◇◇
というわけで僕はきょうも街ブラをして、ド根性植物を探しては自撮り棒で一緒に映った。撮れ高が上がったら帰ってレモンさんが編集してくれるらしい。レモンさんはこういう、パソコンやスマホをいじるのはわりと得意なのだそうだ。
レモンさんの提案で、サブリミナル効果的に宇宙の種チャンネルの真実を織り込んだらどうか、という意見が出たが、そういうことをしたらチャンネルが削除されるのではないだろうかと思ったのでやらないでおいた。
本当のところはどうなんですかね、教えてエロい人、じゃなかったえらい人。
もうアパートの近辺のド根性植物は撮り尽くしたのではないだろうか。それにこのままチャンネルをやっていると「博●ちゃん」の取材が来てしまうのではないだろうか。僕はいやだよ、ド根性植物●士ちゃんなんて。
撮ってきた映像に、レモンさんが著作権フリーの音楽をバンバン乗っけて、エフェクトや字幕ものっけて、宇宙の種チャンネルの最新動画である「公民館の駐車場で頑張るド根性植物を探してみた」が出来上がった。
でもこのままでは宇宙の種チャンネルはいつまでもド根性植物を探すだけになってしまう。なにかいい手はないものか、天才棋士の顔で考えるもそこまでの集中力は僕にはないのだった。レモンさんも然り。そもそも植木さんと谷さんはお話にならない。
「ホームページを作るのはどうかな」
谷さんがそう提案した。ホームページ。そんな、ふた昔前の中学生じゃあるまいし。でもそれはいいんじゃないか、と植木さんもレモンさんも言う。
いまはスマホアプリからぽちぽちとホームページが作れるらしい。実際レモンさんは自分の読書の感想をまとめたホームページを持っているらしい。「no●e」や「は●なブログ」でなくホームページに読書の感想をまとめているのは、親しい人だけにそっと教えるためだという。
ナイスアイディアである。さっそくぽちぽちとホームページを作る。
「宇宙の種 ここは宇宙の種チャンネルのこぼれ種ならぬこぼれ思想をお届けするホームページです あなたは●●人目の未来人 キリ番踏逃げは禁止」
いやマジでふた昔前の中学生が作るやつじゃん。よく知らんけど。
とにかくホームページが出来上がった。なかなか可愛い。でもここに宇宙人のことを書いていいのだろうか。
「思想じゃなくてSF小説のていでUPするのは?」
レモンさんの提案。なるほどその手があったか。な●うやカク●ムにUPするほど危なくないし、これならイケるかもしれない。
というわけで、レモンさんが小説を担当することになった。僕は表紙画像を担当する。とりあえずアジアンタムの写真を撮った。
ホームページはレモンさんとパスワードをシェアして共同管理する。いける、いけるぞ。
その日の夕方、さっそくレモンさんがスマホのメモ帳からテキストファイルに起こしたものを送ってきた。なかなか面白いSFのような気がする。
こちらからはアジアンタムの画像を送った。OKが出たのでどちらもUPする。
まあそこまではよかった。しかしアプリからアクセスカウンターを何度確認してもとにかく回らない。キリ番にたどり着く前にプラットフォームがサ終しそうだ。
これはやはり宣伝する必要があるのではないだろうか。これは次の会議で提案しよう。
◇◇◇◇
「……と、思うんだけど」
僕が提案するとレモンさんは恥ずかしい顔をした。
会議のお供はレモンパックとインスタントコーヒーである。それなりにおいしい。
「いや恥ずかしがってる場合じゃないんだよ。これを広告していっぱい読んでもらわないと、宇宙人が地球に押しかけてきたとき大変なんだからさ」
「うん……分かる、分かるけど……」
「なんで地球人は自分の作ったものを恥ずかしいって思うの?」
谷さんからストレートな宇宙人目線の意見が出た。
「だって下手くそだって笑う人がいるかもしれないし」
「なんで他人の書いたものを他人が勝手に笑うんだい? 他人の努力を笑っちゃいけないって思わないのかい?」
「努力することは恥ずかしいんですよ、この国では。なんでも当たり前にさらっとこなすのが普通なんです」
「だってそれは『床上手の処女』みたいな話じゃないか」
植木さんのストレートすぎる意見に、レモンさんは思わずインスタントコーヒーを噴きかけた。
とりあえずなにか宣伝の方法を考えねばならないというところで意見の一致をみた。その日はそこで解散した。
◇◇◇◇
「これはどういうことだ」
アメリカの大統領が、日本の総理大臣に電話をかけていた。総理大臣はあうあうするばかりだ。
アメリカの大統領が怒っていたのは、植物型宇宙人が地球に来襲することを予言するようなホームページが、日本のティーンエイジャーの手で作られたという報告を国防総省から受け取ったからであった。
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