たとえ孤立していても

今日は月曜日、要は合唱部の練習日。


活動場所の教室は、小さくって静か。


中に入ると、先輩が二人、座ってる。


二人ともタブレットをいじっている。


先輩達に、こんにちはと挨拶、ペコ。


先輩達の顔は数週間前に両方覚えた。


左が、鈴木先輩だ。右が佐藤先輩で。


今は個人情報保護のため仮名で呼ぶ。


わたしは、下の名前で呼ばれている。


ここでは、アリスということにする。


そして、顧問の先生も、入ってきた。


来週のオープンキャンパスの練習だ。


部員は三人で、中等部はわたし一人。


途中から入部したから歌うのは一曲。


先輩二人は、三曲も歌うから大変だ。


経験のないわたしの歌は下手だった。


先輩達はすごくキレイで上手かった。


けれども先輩達も音楽はほぼ未経験。


歌について教えられないのだという。


顧問の先生は、時々口を挟むくらい。


わたしがわたしに歌唱指導をするの。


前代未聞で、頭がおかしくなりそう。


そのうち先輩達は黒板で遊び出した。


顧問の先生に言われてわたしが退室。


教室の外では、バレー部が練習する。


パチンというボールの音が木霊こだまする。


階段を下る時も、鼻歌で自主練する。


ハモリの人の音程は、すごく難しい。


でも、孤独でもわたしは歌えている。


だってわたしは、月兎アリスだもん。


独りぼっちでもわたしは広がってる。


わたしに一番近いものは無限の宇宙。


いつまでも、どこまでも、孤独でも。


際限なく、わたしの物語は続いてく。

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詩集「歌花」 月兎アリス(読み専なりかけ) @gj55gjmd

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