詩集「歌花」

月兎アリス(読み専なりかけ)

長くて短い通学路の途中に

七時半の人の流れは思った以上に早い。


通勤通学ラッシュの中にわたしもいる。


最寄り駅は小さくて、何もお店はない。


同じ制服を着た人が横を過ぎて行った。


歩くのが遅いわたしは置いていかれる。


ついに一人きりになった、長い一本道。


左横は、駅の工事をするための白い壁。


右横は、家の前からまっすぐ続く道路。


朝方でも車通りは多く、景色は進んだ。


そう、いつでもわたしは置いてけぼり。


学校に、同じ趣味の友達なんかいない。


自分の趣味は同年代の女ではおかしい。


なぜ、これが嫌いなのか理解されない。


いつだってわたしは考え方が人と違う。


尊敬されるところも褒め所もなかった。


昔も今も、わたしはずっと変わらない。


幼稚園児の時と今のわたしはほぼ同じ。


考え方が稚拙で遅れたまま変わらない。


親も、そんなわたしが、好きではない。


わたしも、この上なく自分が大嫌いだ。


ふとスマホを開くと、通知が来ていた。


鉤括弧のアイコンは、つまりカクヨム。


どうでもいいことでは、全くなかった。


〇〇さんが作品にレビューコメントを。


△△さんが、わたしの作品をフォロー。


エピソードに、応援のコメントが追加。


わたしに来る言葉は素敵な言葉だけだ。


本当は思ってないんじゃないかと疑う。


けれど、長文で誠意の込められた言葉。


嘘をついて人を弄ぶ人は長文で書くか。


このわたしは、そうとは全然思わない。


歩いていると、学校が目の前にあった。


長くて短い、わたしの秘密の通学路だ。

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