3.一気に強火で、スパイスたっぷりで出来上がり!(中)

(わわわ、ど、どうしましょうっ)

(逃げるしかないでしょ! あんな暴徒化してるのに捕まったら、何されるか分かったもんじゃないわ!)


 おんなのこが、かぜのように、はしっていきます。


 みんなが、てっぽうみずのように、おいかけてきます。


 どんどん、ひとがふえてきました。


 わあ、つなみみたいになっちゃった。


「「「「待ぁぁぁてぇぇぇやゴォォォラァァァアアア!!!」」」」


(どうするんですかっ!?)

(どうしようもない! ……けど、このままじゃラチがあかないわよねっ! こうなったら、いっそ――)


 そんなおんなのこのまえに、さきのほうに、だれかがたっていました。


「あれは!?」


 おとうさんと、おかあさんです。


「おう! もう大丈夫だぞ!」

「さあ、こっちへ! 早く!」

「お父さん! お母さん!」


 おんなのこが、かけよります。


 おとうさんと、おかあさんが、りょうてをひろげます。


 おんなのこも、おとうさんも、おかあさんも、えがおです。


 おんなのこが、とびあがって――。


「「ぐはぁっ!!」」


 けとばしました。つづけざまに、ふたりとも。


(ちょっとおおおおお!? 何しちゃうんですかっ!?)

(当然でしょ! 捕まってたまるもんですか!)

(助けにきてくれたんでしょう!?)

(あの二人がそんなタマか――っと!)


 おんなのこ、きゅうにふんばって、とまりました。


 まえに、ひとがいるのです。なんにんも。


 みんなおじさんで、おおきくて、ゴツゴツしていて、とってもこわそう。


 みるからに、ガラ、わるいです。


「おいおい、親を蹴飛ばすたぁとんだガキだな」

「こりゃあ躾直さないとなあ」

「おい、ウォルターさんよ! こいつがお前んとこのガキで間違いねえんだよな!?」

「へ、へい! 間違いありやせん!」


 おじさんたちにきかれて、おとうさんは、へこへこしながらこたえました。


 それから、いまいましそうに、おんなのこにいいました。


「アリスぅ、捨て子の分際で手を焼かせやがって……」

「育ててもらった恩を返しな!」


 おとうさんとおかあさんが、にらみつけてきます。


 おんなのこ、うつむいています。


 やがて、ちいさく、わらいだしました。


「……ふふふ、そうね、まとめて返すわよ」


 そして、あたらしいマッチをとりだして、シュッ。


「魔法陣展開。術式“召喚”、第5階梯魔精霊“震わす者”よ出よ!!」


 おんなのこのあしもとに、ややこしいひかりのもようが、ぴかっ。


 そこから、くろいかげが、にょきっとわいてきました。


 がいこつがまんとをかぶったみたいで、きもちわるい。


「な、何だぁぁぁ!?」


 おじさんたち、びっくり。


 がいこつさんのくちが、うごきました。


【ハジケヨ】


 どーん!


 おじさんたちのあいだで、いきなり、だいばくはつ。


「ぎゃあああっ!!」

「うわあああぁぁぁ!!」


【ハジケヨ】


 どどどーん!!


 つづけて、なんどもだいばくはつ。


 あっというまに、みんな、ふっとびました。


(ななな、何ですか今度はぁっ!?)

(ガチの魔法よ、全く別の異世界のね)

(魔法っ!?)

(27回前は魔導師だったのよ。ちょっとは名の知れた、ね。それにしても、威力が低いわねー。さすがに無理があったか)

(こ、これで低いんですか!?)

(不死者の王リッチーが精霊化した規格外の存在なのよ? 本来なら、この町ぐらい消し飛ばせるハズなんだけど)

(何てモノ呼んでるんですかっ!?)

(これでも遠慮したのよ? 大陸ごと腐らせる第6階梯の“飲み干す者”は止めといたんだから)

(基準がオカシイ!?)


「ううう……」


 くるしそうなこえがきこえます。


 おんなのこがめをむけると、かろうじておきているおじさんがいました。


「こ、このガキ……ジェームスファミリーに、楯突いて……ただで済む、と……思うなよ……」


(ジェームスファミリーって……)

(この町を裏で仕切ってる一家ね)


「ふん、ちょうどいいわ」


 そういって、おんなのこは、まちのなかへともどりはじめました。


「ガキがいたぞ! こっち――うぎゃあああ!!」


 どどーん!


「おい、この先はファミリーの――うわあああ!!」


 どどーん!


「ま、待て、来るな、来る――ぎゃあああ!!」


 どどどーん!


 おんなのこがいくさきで、ひめいと、ばくはつがつづきます。


 かたっぱしからふきとばしながら、おんなのこは、てくてく、てくてくと、あるいていきました。


 そして、おおきなおやしきにつきました。


 おやしきでは、こわそうなおじさんたちと、そのなかに、えらそうなおじさんが、まっていました。


 えらそうなおじさん、とってもおこっています。


「このガキが……うちの者をずいぶん可愛がってくれたじゃねえか」


 そういって、マッチを、シュッ。


 ぼんっ。


 おじさんのまえに、たいほうがでました。


 いくつも、いくつも。どれも、おはなしのなかのかいぞくせんよりもおおきくて、りっぱです。


 えらそうなおじさんが、たかわらいしました。


「このマッチがあれば、何だって思いのままだなあ! お前の持ってる分がありゃあ、この国を牛耳るのだって夢じゃねえ! お前のようなガキが持ってていいもんじゃねえんだ、俺様が使ってやるから、全部よこしな!」


 わるーいかおです。

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