第六話 学園
「来た……」「なんで来んだよ」「クッソ、もう威張れねぇじゃん」「もう来ないと思ってたのに」「最近あそこの番長のしたらしいぜ」「うわ」「私、あの人と同じクラスなの」「嘘でしょ、最悪じゃーん」「ううパシリはもうやだよ」「居るだけで暗くなるわー」「死ねよ」「やめなよ、あんたが死ぬよ」「もうまじ疫病神」「私なんでこの学校はいちゃったんだろ」「終わりだ」「先生も口出せないし」「誰かあいつを殺してくれ」「神様おねがーい」「今日からここはドイツだな」「嫌い」「あの顔キショい」
廊下で交わされる十人十色の会話は今日だけピッタリと話題も意見も全て一致していた。
生徒達の口から出る罵詈雑言は全て一人の男に集約される。
――うるさい。良いだろ別に、俺がいつ来ようが、俺だってお前らと同じで卒業したいんだよ。大体一回の事件で騒ぎすぎなんだ、もう半年も前の話だろ。お前らだってあそこの学校のチンピラには困ってただろ。
「番長ふっかーつ」「まじ最強」「何見てんだよ」
――ギャーギャー騒ぐな、小判鮫か雛かお前らは。
男は自分のクラスに入り、席を探す。
「うわっ来た」「は? マジかよ」「最悪なんだけど」
「どけよ」
男は自分の席に座る女に鋭い目を向けて言う。
「え? なに今あたしらが使ってんだけど」
「お前、なんで高校入れたんだ、なんでそんなに友達が居るんだ?」
「は?」
「邪魔なんだよ、そこは俺の席だ」
「うざいんだけど」
男は言葉では拉致があかないと思い、行動に移る。
女が座ってる椅子を持ち上げる、椅子は傾斜になり、女は転びそうになって立ち上がる。
「なにしてんの!?」
「……」
男は黙って席につき、ホームルームが始まるのを待った。
――サボりゃ良かった。
やがて担任が来た、何となくウキウキしているのが感じられる。
「皆、突然なんだが、転校生が来ることになった、入ってきて」
転校生は黒板の前に立ち、チョークを持って名前を書く。
「どうも! 上から読んでも下から読んでも似獣甚! どうも似獣甚です! よろしくお願いしまーす」
「テメエ!」
芸人のように名乗った甚につい男改め良太は反応してしまう。
「お、良太くんと同じクラスか」
「甚さんはあそこの席ね」
「はい」
昼休み。
「お前、なんでここに」
良太は前の席を借りて座る甚に聞く。
「前から行ってみたかったんだ、学校」
「七はどうした」
「君の家に結界を張った。僕と一部の闢者しか通れないし、壊せない」
七の安全を知り、安心した良太は話題を世間話に変える。
「それでよぉ」
「へぇ、そうなんだ」
――こういうのが友達なのかな。
「失礼します」
教室のドアが開く。
ドアの前に立っているメガネを掛けた男は教室を見渡す。
「罪前寺良太!」
「!」
学校でメガネを掛けていて、良太を知っている人物といえば、ガクが真っ先に思いつくが、怒り混じりの声音でガクではないと断定し、良太は声の方を見ずに返答する。
「学校でもしつこいな! 陽月! どおした?」
「とにかく屋上に来い、
「甚だ、訂正しろ」
三人は屋上に上がる。
「見えるか」
「ああ」
眼前に広がる七本の柱。
「もうすぐ、『暴食の悪魔』が復活する」
「それは聞いたよ、お前の姉に」
「なるほどね」
「俺達、『闢』は部隊ごとに対応する『七つの大罪』がある」
「『暴食』は?」
「
「そうか。なあ、それ俺も参加できねえの?」
陽月は笑みを浮かべて言う。
「それを伝えに呼んだんだ」
「?」
「お前と俺の第七部隊臨時入隊が認めれた」
「つまり」
「ああ――『暴食』と闘える!」
トレーニングルーム。
「いいか、今回の作戦は『暴食』の祓除のみではない! 圧倒的な力を示し、他部隊より優れていると証明する!」
「「はっ!!」」
「各自、訓練に戻れ。廻、洋、刀矢、水崎」
隊員達は部屋を出ていき、残ったのは――
一月七日春秋
渋谷水崎。
「当日は主に我々が対応する、現場判断は刀矢に任せる。洋はカバー、水崎は妨害、廻は『暴食』の足止めだ」
「了解」
「すいません」
刀矢が手を挙げる。
「確認ですけど、『奏葬』は来ますか?」
「廻」
「来ますよ、総合病院に居ようがあの人は参戦します」
「……分かった。伝え忘れていたんだが、『暴食』の悪魔には可能な限り少人数で挑め」
一月七日はサッとトレーニングルームを出ていった。
虹目家。
「良い? 良太くんには『暴食』の悪魔復活まで、このメニューをしてもらいます」
「おお!」
渡された紙には基礎的なトレーニングから、能力強化。
いつもと変わらないように見えるが、スケージュールがかなりハードだ。
学校の合間合間にもトレーニングするよう書かれている。
各々万全を期して準備する。
そして、9月20日。
「お待ちしておりました」
地面が見えない高さの高層ビルの屋上で悪魔達が跪く。
「ああ……」
「私めはグラトベラスでございます」
「ぱっっっっっっっっっっっっっっっっっっっくんッ」
跪いていた悪魔たちは倒れ、レッドカーペットを作る。
「まだ晩餐会まで時間があるな」
高層ビルから地を見下ろす。
「腹ごしらえにまずは日本人でも喰らうとしよう」
『暴食』の悪魔はここに再臨する。
大罪少女七 奇想しらす @ShirasuKISOU
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。大罪少女七の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます