第3話
箱の側面にある、内容を書き込む欄。
そこに着目すれば、ひとつだけ仲間外れがあった。
11箱のうち10箱は「本」とか「衣類その1」みたいに、私の筆跡で文字が書かれていたのに、ひとつだけ見覚えのない書き込みだったのだ。
私が書いたのと同じような黒色のマジックペンで「青」という文字。それが、問題の箱の内容欄に記されていた。
「やっぱり、
これは引越業者のミスだ。しかも、行先表示の
引越業者に連絡して、取りに来てもらう必要がある。しかし、それはそれで面倒臭い作業ではないか。ただでさえ引越直後は色々やることがあって忙しい時期なのに、さらに一手間増えるなんて……。
心の中で少し腹を立てながら、問題の箱を別の場所にどけるつもりで抱え込む。しかしその瞬間、私は再び違和感を覚えてしまった。
妙に軽い箱だったのだ。それこそ、全く重さを感じないほどに。
「一体何が入っているのかしら……?」
たった今「色々やることがある」とか「忙しい」とか思ったはずなのに、それらが全て吹っ飛んだ。
好奇心を刺激されたのだ。
そもそも、中身を示す「青」とは何だろう?
まあ引越荷物の内容記入なんて、書いた本人がわかれば十分。だから最初の一文字だけ記したのだろうが……。
「『青』から始まる言葉……。物の名前……」
私自身の引越荷物から類推すれば、それっぽいのは高校時代のアルバムだろうか。普通に「アルバム」と書けばいいものを、敢えて「青春時代の思い出」みたいな表記にしたのだろうか。
いやアルバムならば、よほど薄いやつ以外は、かなりの重さになるはず。だから明らかに違う。
ならば……。
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