第13話
リチャードが、礼の前の生徒をレッスンしたあと、大学のレッスン室のドアを開けると、礼はレッスン室前の椅子に座り、真剣に携帯電話を横にして動画を見ている。ちらっと覗くとやはり予想通りだ。
「礼、君の番だぞ。、、また観てるのか?」
「、、そうなんです!!これはレイノルズ先生とカルテットしてますねえ!凄いなあ。ヴァイオリンより大きいのによくポジション届くなあ。
先生の演奏は音量もインパクトもあるし、チェロの方の迫力も凄いのに負けてませんね!セカンドの方とも良く合ってるし。。」
「今日は君の大好きなコンチェルトのレッスンだけど?室内楽曲の方が良かったか?
あと君はヴィオラを始めたいのか?私はヴィオリストじゃないんだが。」
「違います違います!コンクールは月末ですからコンチェルト見てください!!私も頑張らなきゃ!私、中本先生と一緒に弾けるようになりたいです!!レイノルズ先生のレッスンもとても楽しいですが、違う観点を沢山下さいました。もっと中本先生と音楽のことが話したいし、いつか合わせたい、、今の私のままじゃ隣に並んでとても弾けないです。」
礼は椅子から立ち上がり、携帯電話をポケットにしまってから、やる気満々な様子で明るく話す。
「!!、、そうか。
、、じゃあビシビシやらせてもらうよ。
ソリスト以外の活動も良いだろう?それをわかってくれたなら私も嬉しいな。」
リチャードは礼の熱意に心を打たれ、微笑みながら礼を部屋に入れた。
「はい!ご紹介頂いて本当に感謝しています。やっぱりレイノルズ先生のようなソリストには昔からなりたかったので、、チャレンジはしますし諦めたくありません。でも、、腕を怪我した際に色々な音楽を聴いたり譜読みしてみたり、中本先生にも教わって、アンサンブルの中で弾くのもいつも発見があって楽しいなと発見できたんです。
実際治ってから、前より室内楽や弦四の演奏を友人と行ったり、ワークショップに参加してみたりしましたが、ソロ曲を弾くにも色々生かされている気がします。」
礼はヴァイオリンを、藤色のハードケースから出しながら目を輝かせて話す。礼は自分で話しているように、当初はソリストか、オケでも1stヴァイオリンばかりを狙ってきた。
彼女は技術は確かではあるものの、目立つ点がなく、飛び抜けた超絶技巧も持たないので、本人の希望を叶えるには毎回厳しい指導をせざるを得ず、落ち込ませてしまうことも多々あった。
それが、明と引き合わせてからは明の指導を持ち前の素直さで吸収力していき、好奇心旺盛な性格もあって音楽を楽しみ始めていた。
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