第11話
ミカエルは、羽田空港についてから、リムジンバスに乗り、明が楽団を退団時に連絡先住所として告げた国立市まで赴いた。
このためについでに日本を観光しようと休暇を1週間取得したので、とりあえず観光は後回しにし、バスで国立駅付近まで直行後、国立駅前近くに取ったホテルにスーツケースを預けた。その後、ホテルの係員に頼んでタクシー乗り場まで案内してもらい、ウェブで予め印刷しておいた日本語表記の住所を見せ、向かってもらった。
「アリガトウ、ゴザイマシタ。
良い午後を。」
ミカエルは以前明に教わった日本語のお礼の文言を明の発音を思い出しながら口にし、残りは英語で話してタクシーを出る。
「日本人のご友人がいるって言ってましたが、お兄さん日本語上手ね。
ダンケシェーン!!楽しい観光だと良いね。」
タクシー運転手の壮年男性は、他の日本人や明と同様に英語は苦手そうだが拙いなりに話し、ミカエルがドイツ人だと自己紹介したからか、片言のドイツ語で礼を述べ、ドアを閉めた。
ミカエルが降ろされた場所で、かなり大きい、日本の伝統的な瓦屋根の邸宅を見つめた。調べたところや観察した所によれば、日本では家の門扉近くに表札があるが、「中本」と言う漢字が見えた。
(これは、明のファミリーネームの漢字だったはず。。間違いない。)
「、、Hello?? どうされました?何かお困りです?」
ミカエルが表札を見ながら、キョロキョロしていると、邸宅から、明よりは5才以上若い印象の青年が、たまたま出てきた。郵便受けをいじっていて、郵便受けに用があったようだが、ミカエルに気がつき英語で話しかけてくれたらしい。
日本人は英語が苦手と明からも聞いていた通り、道の通行人やタクシーの運転手は、ミカエルが話しかけると動揺した様子で発音が聞き取りづらく、拙い英語だったが、この青年は流暢で発音も良い。
そして、容姿がどことなく明に似ている。背丈や体格は明と違い、健康的だが、瞳の印象は明に近い。鼻から下は明には似ていないが、家族かもしれない。
「私は、中本明さんの友人のミカエル•シュルツと言います。ベルリンの楽団と、、大学時代も付き合いがありました。
明さんに用事があるのですが、会うことは可能ですか。ここは中本さんのお宅でしょうか。
楽団から聞いた住所に来ました。
明さんと最近連絡が取れなくて。」
「、、、初めまして。僕は中本昂と言いまして、明は兄です。、、やっぱりフルーティストのシュルツさんでしたか。お噂も、兄に良くしてくださったことも聞いています。
兄は帰国してから病院に入院中です。2週間は入院と聞いています。
どうぞ中へ。
長旅、お疲れでしょうから。」
昂は、明とよく似た瞳でこちらを見つめ、優しく微笑み、ドアを開けた。
ミカエルが中へ入ると、邸宅は中もかなり広く、客間のような部屋に通された。外観は伝統的な日本の邸宅だったが、中は全てがそうではなく、客間は洋風で、テーブルは木製だが大理石のパネルが貼られていて豪華そうだ。
「コーヒーでもお持ちしますね。ちょっとお待ち下さい。」
昂はミカエルがソファに座ったのを見てから、立ち上がったが、ミカエルは呼び止めた。
「、、もし可能でしたら、明の入院先を教えて頂けますか。長居はしません。私のことは構わず。お気遣いありがとう。」
「、、、ミカエルさんお一人だと兄は会うかわかりません。、、母に、ドイツから誰か来ても通さないでほしいと言ってるのをこの前病院で聞きましたから。
なので、お急ぎならこれから僕と見舞いに行きましょうか。」
昂は足を止めて振り返り、ミカエルに提案する。
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