Game 007「追っ手の兆し」



 ──聖剣の輝きが、広間ホールに満ちる。


 白色の虹霓。

 月暈の淡き氷晶光。

 輪となって広がる霧の虹。

 それは、間違いなく聖剣に宿りし破魔の波導だった。

 白き光輪は解放と同時に、不浄なる魔の理を苛烈に裁断し、赤が閃光のように弾ける。


 バチャンッ! バチャンッ!


 無限に涌き出づるかに思えた魔力生命。

 あれほど広間を埋め尽くしていた魔物の呪い。

 それらは聖剣から放たれた光に炙られ、瞬きよりも早く輪郭を崩す。

 水風船の割れる音。

 中身が地べたにブチ撒けられる音。

 遥か古代に至高と値付けられ、多くの退魔伝説を残した名剣。


 〈聖剣セレノフィール〉は、まさしく聖剣の御名に相応しかった。


 喉元に迫った逆手剣の刃。

 ショートソードによるガードは間に合わず、たったひとつの判断ミスが命取り。

 一か八か、〈取替え〉によるギリギリの回避を選択しようとして、失敗する未来を予見した直後。

 空間が開かれ、視界が拡張され、間一髪のところで大きく距離を取れた。

 喉元に入った薄い赤の直線。

 滲み出し零れるのは、文字通り命の雫。

 ゾッと冷や汗を感じながら、それでも安堵するのにはまだ早い。


「ッ……殿下! そいつの右腕を!」

「──レイゴン……!?」

「シャアァアァアァッ……!」

「今の内に、剣をカラダから切り離すんです!」


 伝える言葉は簡潔に、下すべき指示は明瞭に。

 ベルーガが突然、なんで広間にやって来たのかとか。

 ウェスタルシアにあるはずのセレノフィールが、どうして今ロスランカにあるのかとか。

 聖剣の使い方を知らなかったはずのベルーガが、どうやって聖域の奇跡を発動したのかとか。


 そんな疑問は、後でいくらでも追求できる。


 戦闘の最中に余計な思考は、要らない。

 この状況で為すべきは、ただ敵の撃滅あるのみ。

 どんな魔物も、どんな魔法も、至高の聖具はルールを無視し、強制的に滅ぼせる。

 手順、条件、弱点、そんなものはぜんぶ無用だ。

 魔を討ち破る。

 だからこその聖なるつるぎ……!


「殿下! そいつの本性はゴブリンじゃなく、あくまで逆手剣の方ですッ! セレノフィールで切り離せば、確実に殺せるッ!」

「! わ、分かった!」

「シャアッ! シャアァアッ!」


 苦しみにのたうつアンデッド=ゴブリン。

 白虹剣の聖域解放。

 人類を護る破魔の結界に捕らわれ、それでもまだカタチを保つとは、やはり神代の魔物は恐るべき存在力を獲得している。

 たかがゴブリン、たかがグール紛いのアンデッド。

 見かけに騙され、侮ったが運の尽き。

 呪剣の殺し屋ヴリコラカスは、真実脅威の魔物だった。

 然れど、


「──これでっ、どうだッ!」

「ッ、ァ……」


 ベルーガが聖剣を振るう。

 アンデッド=ゴブリンの右腕が、宙を飛んで床に落ちる。

 たとえどれだけ拙い剣術でも、地を這う虫の翅を捥ぐくらい、幼子でもできる単純なコト。

 呪われた逆手剣は、聖剣の輝きによって魔力を失った。

 アンデッド=ゴブリンの肉体は塵となって消滅し、後には一本の逆手剣が残る。


 黒塗りだったそれは、気がつくと普通の鋼鉄色に変わっていた。


「や、やりましたわ! ベルーガ様が魔物を、見事討ち滅ぼしました!」


 キャー! と、ガブリエラが泣いて喜びながら、広間に走ってきた。

 そしてそのまま、ベルーガに飛びつき強く抱き締める。

 

「わっ、わっ、ちょ、ガブリエラ……!」

「良かったですわっ、本当に良かったですわっ!」


 魔物を消滅させたからだろう。

 聖剣は光を放つのをやめ、ベルーガの手の中でゆっくり鞘に戻っていく。

 霧霞の白鞘。

 担い手の意思に呼応して、きっとひとりでに顕装されたり、消装されたりするのだろう。

 古き神秘のひとつにして、ものすごくカッコいいファンタジー武器だった。


「……フゥ」


 喜びに笑い合う幼馴染を眺めながら、俺は床に座って、小さく肩の力を抜く。

 一応、戦いの途中で逆手剣を奪えれば、どうにか倒せるかもしれないとは思いつくコトができたが、結局はベルーガに助けられた形だ。

 聖剣が何でここにあるのかは知らないが、セレノフィールが無ければ俺は死んでいた可能性が高い。


(イキってソロで攻略しようとしたけど、俺も少し、気負いすぎてたかな……)


 広間をモブで埋め尽くされるより先に、逃げるくらいはしても良かった。

 反省しつつ、でも、聖剣が出てくるとか完全に予想外だったし、ベルーガもガブリエラも戦力に数えるのは難しかった。

 状況的に、ある程度は仕方がなかったと自分を慰めながら、休憩を終えて逆手剣を拾う。


「あっ、レイゴン。それ触って大丈夫なの?」

「もう黒くないですし、たぶん平気ですよ」

「よく触れますわね、魔物の武器なんて……」


 心配と呆れの両方の視線に肩を竦めながら、試しに素振りをする。

 ビュンッ、ビュンッ、風を切る鋭い切り払いが、小気味のいい手応えだった。

 重さはあまり無く、これなら筋力の劣る女性でも充分に使えそうである。

 それに、


「たしか、だったか?」

「レイゴン?」

「いや、か」

「んなッ!?」


 アンデッド=ゴブリンがやっていたように、見様見真似で同じ構えを取ると、瞬間移動してガブリエラの背後に立てた。


「やっぱり、あの瞬間移動は、この逆手剣のおかげだったみたいですね」

「わ、わたくしを実験台にしましたわね!?」

「すみません。でも、どうですガブリエラ様? この剣、護身用に」

「いいい要りませんわよッ、魔物が使ってた武器なんて!」

「ガブリエラ様みたいな方が使えば、きっと意外性もあるので、かなり不意打ちの成功率は高そうですけど」


 いざと言う時の身を守る術。

 俺としては、かなり良いアイデアだと思うのだが。


「俺や殿下が、いつでもガブリエラ様を守れるとは限りません。もしものコトがあったら、俺は一生後悔します」

「っ!? お、お気持ちは嬉しいですわ! でも、お気持ちだけね!?」

「うーん……レイゴン、ガブリエラは普通の剣も握ったコトがないんだ。なのにいきなり、逆手剣っていうのは難しくないかな?」


 瞬間移動だって、慣れるまで時間がかかると思うよ。

 ベルーガの冷静な指摘に、ふむと頷いた。


「たしかに、それもそうですね。ではこれを」

「ええ……?」

「逆手剣は俺が使います。殿下にはすでにショートソードとセレノフィールがあるので、俺のショートソードはガブリエラ様に譲った方がいいでしょう」

「それじゃあ、レイゴンの武器が減っちゃうじゃないですの!」

「俺には指輪もあります。ポケットの石なんかより、こっちの方が万倍も心強いですよ」

「あ、聞こえてはいましたのね……」

「反応する余裕はありませんでしたが、うっすらとは」


 というワケで、俺はショートソードをガブリエラへ譲り、代わりに逆手剣をメインウェポンに変更した。

 死角からの致命の一撃。

 技としては卑劣極まるが、武器としてはかなり俺向きかもしれない。


(狙った敵の背後にしか飛べないってのは、ちょっとビミョーだけど)


 〈取替え〉と組み合わせれば、いい感じに撹乱できそうだ。

 まさか、こんなところで神代の武器を入手するなんて、運が急に上を向いてきて少しだけおっかないが。

 戦力の上昇は素直に歓迎して喜ぶべきだろう。


「──で、殿下の聖剣はどうしてここに?」

「えっと……それなんだけど、僕もよく分からないんだ」

「ベルーガ様の手に、突然現れましたわよね?」

「担い手の意思に応えて、ウェスタルシアからひとりでに飛んで来たってコトですか?」

「たぶん……」

「……だとすると、王宮は今ごろ、殿下の無事に気がついたかもしれませんね」


 〈聖剣セレノフィール〉に、担い手の意思に応えて遠方から召喚されるなんて逸話があったかは知らないが。

 長年〈アリアティリス〉で保管されていた古代の秘宝が、突如として姿を晦ましたとなれば、今代の担い手との何らかの因果性を疑うのに、根拠は足りているだろう。


「じゃ、じゃあ、もしかしたら救援が!?」


 にわかに喜色を浮かべるガブリエラに、しかし、ベルーガは顔を曇らせ首を振った。


「あるいは、ルキウスが追っ手をかけてくるかも」

「聖剣が殿下のもとに渡ったと推測されれば、可能性はありますね」

「そんな……」


 門扉ゲートの封鎖期間にも限界はある。

 聖剣があれば、ベルーガであってもロスランカの地を生き残れるかもしれない。

 果たしてルキウス・アルベリッヒが、何処まで自身の裏切りを完遂しようとしているか。

 あの男の本気次第で、今後の状況は大きく変わってくるだろう。


「砦の攻略は完了しました。腰を下ろして休みたいところではありますけど、日没までにはまだ時間があります」

「うん。次の目的地には、早く移動を開始した方がいいだろうね……」

「でも、大人しく救援を待つというのも、アリではないでしょうか……?」

「その救援が、100パーセント信じられる人間であれば」


 俺たちは唇を引き結んで、〈朽ち果てた怪人砦〉の玄関扉を開けた。





 ────────────

 ────────

 ────

 ──




 時しばらくして、王宮。

 〈アリアティリス〉では今まさに、三人が危惧していた通りの事態が起こりつつあった。


 西方大陸、中北部エルノス人国家。


 エルノス人というのは、エルフ、ドワーフ、ニンゲンの三種族を指し、ウェスタルシア王国では建国時からニンゲンの王を戴いて統治が行われている。


 しかし、王宮の名は〈アリアティリス〉


 エルノス人が古くから知る種族神話にあやかって、伝説のエルフの国と同じ名前を、ベルセリオン王朝はつけた。


 輝きの国。


 そんな意味を持つ王宮であれば、聖王聖君の居城には、まさに相応しい高貴さを備えるだろうと。

 かつての宮大工と王家との間で、そんなようなコンセプト決定が行われたようだ。


 白亜と大理石の、荘厳なる王の住まい。


 常駐の騎士たちは、金糸で縁取られた純白のマントを背負うコトで、聖なる王権の誇り高い守り手であるコトを誓っている。


「…………」


 ルキウス・アルベリッヒもまた、同じ装いだった。

 いま、ルキウスは評議会に呼ばれ、緊急招集が掛けられた会議に参加している。

 長方形のテーブルを囲って、集まっているのは国の要人たち。

 王の席は空いているが、それはまだ新王の戴冠式が行われていないため。

 上座に最も近い順に、七名の重要人物が席に腰を下ろす。


 第一王子──ベゼル・ベルセリオン。

 王妃(王太后)──クルエラ・ベルセリオン。

 法相兼外相──オスカー・クロムウェル。

 財相──ミカエル・ゴールデンハインド。

 内相兼密告者の長──デイモン・オルドビス。

 王の騎士キングズナイツ大総長にして〈王の杖〉兼任──ジェニファー・シャンゼリゼ。


 そして、〈王の剣〉ルキウス・アルベリッヒ。


 いずれもウェスタルシア王国では、知らぬ者なき大人物。

 第一王子ベゼルは、言うまでもなく暫定王位継承者。

 王妃クルエラは、旧姓クロムウェル。

 法相であり外相であるオスカー・クロムウェル辺境伯の娘で、先王亡き今は次期王太后。


 王族に連なる者は、評議会でも王の席に近い位置に座る許しを得ている。


 その横に続くのは、財相であるミカエル・ゴールデンハインド。

 ここからは家格がモノを言い、公爵家が来れば次に来るのは当然、侯爵家であるデイモン・オルドビス。

 財相は国内の財政、国庫を管理し、内相は国内の治安維持と、土木や治水などの国家事業を指揮する頂点。

 だが、デイモン・オルドビスに関しては、密告者の長であるという特記事項も忘れてはいけない。

 間諜機関の王は、裏ではかなり冷酷な仕事をしていると噂である。


(──もっとも、それは此処にいる人間、全員に当てはまる話だろうがな)


 自身の上司であり、絶えず微笑を崩さぬ大総長を見る。

 ジェニファー・シャンゼリゼという老騎士──否、女魔術師もまた、ここでは海千山千の狐狸。

 同じ〈王の騎士〉だからといって、油断してはいけない。

 〈王の剣〉は最強最優の剣士に贈られる称号だが、〈王の杖〉は深き叡智と超常の御業によって認められた賢者の証。

 下手な芝居は、容易にルキウスの嘘を露見させるだろう。


 最初に口火を切ったのは、オスカー・クロムウェルだった。


「皆、集まったようだ。此度の招集、それは他でもない。先日に起こった、プリンス・ベルーガ襲撃事件について、つい先ほど、新たな事実が発覚したためだ」

「どうやら、わたしの息子は生きているみたいなの」

「! それは誠ですか!?」


 驚きを露にしたのは、ミカエル・ゴールデンハインドが最も早かった。

 小太りの財相は、暑苦しい金の長髪を汗で額に張り付け、目の下にはクマができている。

 クルエラはニッコリとそれを見つめ、


「ええ。だって、司祭が言ったの。〈聖剣セレノフィール〉が儀式の間から、急に飛んで行ったんですって」

「聖剣が、飛んで行った……?」

「司祭によると、古き伝説に曰く、聖剣は担い手の求めに応じて、相応しきところへ召喚されるコトがあったそうだ」

「で、ではっ、我が娘ガブリエラもまたっ、無事なのでしょうか!?」

「分からないが、プリンスの無事が分かった。ならば貴公のご息女も、間違いなく無事であるだろう!」

「おお……!」


 クロムウェル家の父と娘の発言。

 ミカエル・ゴールデンハインドは心底から安堵した様子で、神への感謝を呟く。

 一方で、眉をひそめたのは第一王子ベゼルと、内相デイモンの二人だった。


「……聖剣にそのような逸話があったとは、寡聞にして聞かなかったが」

「私も初耳ですな」

「それは仕方がないわ。何しろ、司祭でさえも把握していなかったんですもの」

「文献か何かを漁ったので?」

「そうみたい。オルドビス侯、あなたもさぞ安心したんじゃないかしら。ベルーガが無事なら、きっとあなたの息子も無事だと思うわよ」

「……アレは、私の息子ではないですがな」

「とにかく! 聖剣がプリンスのもとに召喚された以上、我々は疑問に向き合わなければならない!」


 話が横道に逸れかけたためか、オスカー・クロムウェルが声を大きくして、室内の注目を集めた。

 テーブルに両手を着き、ダンッ、と立ち上がった辺境伯は、まっすぐにルキウスの顔を見据える。


「サー・ルキウス!」

「ハッ」

「貴様は先の王陛下より、我が孫の身辺警護を仰せつかっておきながら、先日、あろうことにまるでその任務を果たせなかったな?」

「……はい。面目次第もございません」

「なに謝る必要は無い! 名にし負う〈王の剣〉が身を張って、それでもなお刺客を討ち取れなかったと言うのなら、相手はさぞかし我々の想像を超えた無敵超人だったのだろう! あるいは魔物であったのやもしれぬ! ──なにせ」


 なにせ、サー・ルキウスともあろう騎士が、ただの人間に辛酸を舐めさせられるなど、ありえるはずが無いのだから。


「それともまさか、貴様が騎士の誓いを忘れ、わざと下手人を逃がしたとでも? いや、いやいや! サー・ルキウスに限って、それこそあるはずがない!」

「辺境伯。さすがにそれ以上は、〈王の騎士キングズナイツ〉への侮辱が過ぎるねぇ」

「おっと! これは失礼、大総長殿。なにぶんこの身は徒人ただびとであるため、つい邪推してしまったのですよ──とはいえ、なぁ、デイモン?」

「フン。当日の夜、騎士たちにプリンスの護衛を命じた者としても、たしかに気にはなりますな。ルキウス卿、貴殿は事件当日、たしかプリンスが殺されたと証言していたはずだ」

「はい、その通りです」

「だが、聖剣は担い手のもとに召喚され、プリンスは生きている可能性が高くなった。これはどういうワケだ?」


 ルキウスのもとに、一斉に視線が突き刺さる。

 けれど、ルキウスは努めて平静を保ち、真実を織り交ぜながら告げた。


「……殿下が殺されたというのは、私の間違いだったのでしょう」

「間違い!? 貴様、間違いの一言で済むと思っておるのか!?」

「あの夜は激しい戦いでした。私は刺客を追い詰めましたが、殿下と二名のご友人は、あと一歩のところで私の手の届く範囲から逃れてしまい、気づいた時には大量の血を残して消えていたのです」


 刺客は護衛の騎士たち諸共に、第三王子とその友人を殺した。


「たしか──姿も残さず、というのがルキウス卿の所見だったはずですな?」

「はい。なので、もしかすると刺客は、殿下たちを殺したと見せかけて、実はロスランカの地に攫っていったのではないでしょうか?」

「なんですって?」

「……刺客が門扉ゲートを使って逃げたと、貴様は語っていたが」

「ええ。やぶれかぶれの愚策。切羽詰まっての逃げの一手だと思いました」

「っ〜〜! ルキウス卿! 貴方がそう仰ったから、我々は門扉ゲートを封鎖して、下手人に報いを与えてやるべきだという意見にも賛同を示したのですぞ!? そのための使いも、もう王国中に放った後だというのに……!」

「──申し訳ございません。このルキウス、一生の不覚です」


 頭を下げ、深く詫びる。

 すると、辺境伯と公爵は、さらに口を開いてルキウスを責め立てようとし──


「よせ、法相。財相も」

「っ、しかしベゼル殿下……」

「この者は、我らが子をみすみす死地に閉じ込めさせたのですぞ!?」

「処分は下す。サー・ルキウス、貴公には後ほど〈王の剣〉を辞して貰おう」

「──ハ」

「大総長も、それで構わないな?」

「ええ、構いませんよ」

「では、この話はいったん後回しだ。今はまず、三人の救出を如何にして為すか……何か考えはあるか?」


 冷静な問いに、手を真っ先に挙げたのは〈王の杖〉だけだった。


「ロスランカの地は、いたずらに人を送り込んでも、無駄に犠牲者を増やすだけでしょう」

「ならば、少数精鋭か?」

「少数精鋭。それも、神代の不条理に慣れている者でなければなりますまい」

「……つまり、〈神代探訪〉か」

「大総長。それに皆さん。罪滅ぼしとして、私も志願いたします」

「なるほど。〈王の剣〉と〈探検者シーカー〉の救出部隊……」

「ふむ。不足は無いと見たが、どうだ?」


 確認に、異論を挟む者はいなかった。

 不満や猜疑、愉楽。

 様々な感情いろを湛える者はいたが、結論は下された。


「では決まりだ。〈神代探訪〉への要請は、〈王の杖〉に任せるものとする」

「かしこまりました」

「よし。後は〈探検者シーカー〉の合流を待って……サー・ルキウス。汝の務めを果たして来るがいい」

「ハッ!」


 裏切りの騎士は、白マントを翻し門扉ゲートへ向かった。



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