第2話-雨宮照大-
『幽霊の 正体見たり 枯れ尾花』
ずっと信じてた事が、壊れたとき俺の頭に浮かんだのはその言葉だった。
俺の親父はいつも『頑張ったら報われる』と言っていた。
今思えばそれは、自分自身に信じ込ませていたのかもしれない。
親父が事故で死に、母親も相次いで亡くなった。
思ったのは一つ。頑張っても報われないんだ――と。
それから10年が過ぎ、俺は高校2年生になった。
小学、中学、高校。自分ではない、誰かを演じるような日々だった。
そんな中で、同じクラスの一人の女子が気になった。
高尾 宮。いつもクラスの隅で一人で居る。
そいつを見ているとまるで俺自身を見ているようで――。
いても立ってもいられなくて、声をかけた。
「高尾さん?」
返事がない。
「高尾さん?」
もう一度聞き返す。
「あ、ごめん...」
そっと顔を上げる彼女の顔は相変わらず暗い。
「相変わらず暗い顔してるね。ほら、もっとスマイル!」
こんなこと――自分は言わない。
自分で言ったことに、いや、自分を偽ったことに嫌気が差す。
「雨宮くん、なにか用?」
慌てて笑顔を作る彼女に聞かれる。
「いや...何も用はないよ。」
そうじゃないだろ、馬鹿。
本当は相談に乗りたい。
本当のことを聞きたいんだよ。
「雨宮くん、私一人で居るのが好きなんだけど...」
家に帰り着いてからも考えていた。
あんなに辛そうな顔をしているのに、何が一人が好きだ。
浴槽の中で呟いた。
「『幽霊の 正体見たり 枯れ尾花』」
思わず口に出した言葉が、浴槽の壁に反射して、消えた
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