人生の行方を見たり枯れ尾花

紅葉ひいらぎ

第1話-高尾 宮-

人生とは、幽霊のようなものだと思う。


そう気付いたのは、2年前――14才の夏だった。


その日、私は学校から帰ってすぐ、親に『離婚する』と伝えられた。


突然の事過ぎて、何を言っているのか理解できなかった。


頭が真っ白になり、何かを説明している母親には目もくれず、自室に閉じこもった。


私の人生って何?親が離婚して、弟と父親二人で過ごすようになっても、その言葉が頭を渦巻いた。


『幽霊の 正体見たり 枯れ尾花』


大事で、掛け替えのないことだと思っていた人生が、まるで枯れ尾花のように見えた。


「...おさん、高尾さん?」


「あ、ごめん...」


私の目の前に居る、何の心配もなさそうな男は、雨宮照大あまみやしょうだい


「相変わらず暗い顔してるね。ほら、もっとスマイル!」


そんなんで笑えるかっての。


もちろん口には出さず、作り笑いを浮かべる。


「雨宮くん、なにか用?」


そう、こいつは私と全く関わりがない。


強いて言えば席が隣なくらいだ。


「いや...何も用はないよ。」


こいつの考えてることが分からない。


それは私だけではなく、クラスの皆が思っていることだろう。


こいつはいつも気楽に笑っている。


人の悩みも知らないで――と言うのはお門違いだろうか。


「雨宮くん、私一人で居るのが好きなんだけど...」


思ってもいないことを口に出す。


本当は一人で居るのが辛いくせに、本当は皆と笑っていたいのに。


でも、枯れ尾花だと分かった人生で今更何を望むのか。


周りの人に――少なくともこいつには――その正体は分かっていないのだから。


放課後、私は家に帰らず公園に立ち寄った。


家に帰っても弟と遊ぶ気にはなれない。


「『幽霊の 正体見たり 枯れ尾花』」


呟いた言葉が、日差しで乾いた地面に吸われていく。

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