異世界大戦

第53話

　それでも上手く立ち上がれない身体を無理矢理に立ち上がった俺はパワードスーツから飛び降りたアンドロイドはどこにいるのかと確認していく。

　「ッ！！？」

　俺の視界にはこちらに向かって高周波ブレードを構えて駆け寄って来ているアンドロイドの姿が目に映った。

　急がなければと三半規管が狂っている状況をどうにかする為に、俺は頭部に【超強化再生】の力を集中させていく。

　そうして三半規管の狂いを治して傷付いた身体を無理矢理に立ち上がり迫り来るアンドロイドの方を確認する。

　既に俺とアンドロイドとの距離はだいぶ近付いていたのだが、今の俺との距離なら最低限の再生を済ませて近接戦闘は可能だろう。

　再生を最低限に済ませた俺に向かってアンドロイドは正確な軌道で高周波ブレードを振るって来る。

　空気を切り裂く様に正確に振るわれる高周波ブレードの斬撃は、正確だからこそ振るわれる速度もパワードスーツ着用時よりも遅いため、俺はギリギリまで引き付けてからアンドロイドの斬撃攻撃を躱してしまう。

　高周波ブレードを持つアンドロイドの手首を掴んで握ることでアンドロイドの手を破壊しようとするが、そんな俺に向かってアンドロイドは蹴りをかまして来た。

　アンドロイドの機械の力で繰り出される蹴りの威力は凄まじいが、それでもパワードスーツの爆発やエネルギー弾よりも威力はない。

　それでも蹴りによる衝撃で手を離して後退してしまう。これが万全の状態ならば手を離すことも後退することもなかったはずだ。

　武装を貫通した衝撃が少しだけだが肉体に届いてしまったが、それでもこれなら数秒程度の時間で回復するだろう。

　今もパワードスーツの爆発の影響で受けた衝撃によるダメージは順調に回復している。

　このまま猛攻を続けるアンドロイドからの攻撃を躱しているだけで、俺は回復してアンドロイドに圧勝することだろう。

　だが、そんな戦いはつまらないと思っている俺もいた。だからこそ、俺は【超強化再生】で回復する前に俺の方からもアンドロイドに攻撃を加えていく。

　振るわれた高周波ブレードの連撃を躱し続けて、俺は反撃に拳や蹴りを繰り出すが、どうやらアンドロイドは回避を優先しているせいで躱されてしまっている。

　このままお互いの攻撃が当たらずに俺が回復する方が早いかと思われたが、アンドロイドはもう一つの高周波ブレードを取り出して二刀流で攻撃を仕掛けて来た。

　振るわれる高周波ブレードの数が増えて冷りとする。元々両手で持っていた時でも振るわれる速度が高かったのだが、二刀流でも振るわれる速さがそれほど落ちることなく、その上で振るわれる高周波ブレードの数が増えた結果、アンドロイドの攻撃回数が増えて俺の武装の装甲にも切り傷が出てしまっている。

　それでも肉体までは攻撃が当たっていないのは肉体の再生で身体の不調がどんどんと取り除かれているからだろう。

　俺が身体の調子を取り戻していくのに比例するようにアンドロイドの身体からピーピーというエラー音がし始める。

　何かしらの問題がアンドロイドに発生しているのだろう。このまま待ちでいるよりも俺が倒すと決めた俺は高周波ブレードを受ける覚悟を決めて前へと出た。

　ギリギリで一振り目の斬撃を躱した俺は二振り目の斬撃をエネルギーを集めた手刀で迎撃する。

　いくらエネルギーを集めたところで必殺技にもなっていない攻撃では、起動している高周波ブレードを叩き折ることは出来ずに武装の装甲を削られていく。

　それでも俺の左手から繰り出した手刀はアンドロイドの高周波ブレードに切断はされていない。

　そのまま拮抗状態を維持しながら俺は右拳にエネルギーを収束させる必殺技【エナジーナックル】をこれで終わりだ！！とアンドロイドに繰り出した。