第38話

 大阪駅にあるゲートから攻めて来ている機械生命体たちとの防衛戦に参加するのかどうするかを悩んでいる俺の元に自衛隊員が1人やってきた。


 「ここに居ましたか。上司が呼んでいますので来てくれますか?」


 「ん?分かった。」


 何かあったのだろうか?疑問に思うが、俺はとりあえず案内役の自衛隊員に付いていく。


 「着きました。少し待っていてください。」


 「分かった。」


 案内役の自衛隊員が天幕の中に入っていくのを見送り、俺を呼びに来るのを待っていると少しして呼びに来た。


 天幕の中に入ると、明らかに見た目から偉い人だと思う初老の男性が座っており、その周りに自衛隊員たちが並んでいる。


 「来たようだな。君に頼みたいことがある。大阪のゲートに向かい、攻めて来ている機械生命体を倒して欲しいのだ。」


 「向こうは勝てていないのか?」


 「おい!なんだそれは!敬語で話せ!!」


 つい敬語を忘れて話してしまった。そんな俺を初老の偉い人の後ろに立っていた男が怒鳴り声を上げて非難してくる。


 その言い分に苛つきはするが、こちらも敬語を忘れてしまったので文句は言えない。


 「敬語は使わなくても構わない。それよりも受けてくれないか?」


 「元々、行くかどうかを悩んでいたので構いませんが、防衛に失敗した際に何かありますか?」


 こうして依頼してくるのなら何かしらの防衛失敗のペナルティがあっても可笑しくはないし、今回も俺が侵略者の指揮官である存在を倒せるのかは分からないのだから聞いておきたい。


 「ない。だが、こちらから君に何かを渡すことも出来ない。それは申し訳ないが我慢して欲しい。せめて君の名前が分かるのなら報酬を出すことも出来るのだがね。」


 「それなら良いです。大阪のゲートには行きますし、報酬もいらないので何かしらの干渉をして来て欲しくないですから。」


 国だけでなく誰かに利用されたくはない。今回のような侵略者とは俺の生活もあるし戦うが、それ以外のことで国や他人からとやかくは言われたくないからな。


 「そうか。それなら向こうを頼んだ。」


 初老の偉い人が頭を下げると、後ろの自衛隊員たちも俺に頭を下げてきた。そんな自衛隊員の偉い人たちを置いて、俺は天幕の外に出た。


 俺が天幕から出てすぐに俺に対して怒鳴ってきた自衛隊員の男が俺の名前を話させてもっと協力するようにした方が良かったのでないかと話している声が聞こえて来たが、俺は盗み聞きはしないですぐにその場から立ち去った。


 ステータスボードを操作してヘルプで別のゲート内に転移する方法を調べていくと、ステータスボードに追加されていたゲート転移で転移したいゲートを選ぶ必要があるそうだ。


 そして転移したいゲートを選ぶと、ゲート転移が発動してゲート内の中で地球側のゲートの近くに転移するとヘルプには書かれていた。


 「簡単だな。これをこうすれば良いのか。」


 ゲート転移を選択して日本エリアから大阪駅にある機械生命体から攻められているゲート内へと転移を開始した。


 ほんの一瞬だけ意識がなくなるのを感じながら俺は別の場所に転移していた。ここが大阪駅ゲートなのだろう。


 既に地球側のゲートの近くまで戦場になっており、大量の銃撃で起きている発砲音がここまで聞こえていた。どうやら機械生命体は銃火器を使用してくるみたいだ。


 「おい、お前は誰だ!!」


 「ん?」


 転移して来た俺に対してゲート前に集まっていた怪我人が多い選ばれし者たちは警戒しており、その中には武器を向ける者すらもいる。


 「東京のゲートから来た。それでもう行ってもいいか?」


 「は、本当に味方なのか?」


 「ああ、そうだよ。東京の方はもう終わったからな。その内、俺以外の増援も来るかも知れないぞ。じゃあ俺は行く。」


 今も聞こえる銃声などの戦闘音が聞こえる戦場に周りの声を無視して俺は向かった。

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