第35話

 「そ、そんな……馬鹿な…………こんな事が、起こるわけあるかぁああああああああああ!!!!!!!!!」


 自身が放った血の槍がいともたやすく破壊されたことでボルビックは目を見開いて絶叫する。


 俺の必殺技【エナジーナックル】がボルビックの放った血の槍を破壊した。これが現実だ。


 「ふざけるな!!?われは、我は男爵級吸血鬼ボルビックだぞ!!??いくら化け物の様に強くてもたかが人間如きに!!なぜ我が敗れるのだ!!殺されないといけないのだぁああ!!!???!!!???ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなぁああああ!!!!!!!!こんな事があるわけがないんだぁああああ!!!!!!!!!!」


 再生途中で肩からほんの先しかない腕や太ももの半ばまでしか再生していない足をじたばたと動かしてボルビックは暴れる。


 その姿は死にかけの虫のようだ。あれだけ強かった存在がこんな有り様になっているのにほんの少しだけ悲しくなるが、ボルビックのせいでどれだけの人間が死に、俺を守った東条の事を思えばそんな気持ちもすぐに失せて来るが。


 「さてと、殺すか。」


 この見苦しい真似をしているボルビックを殺す為、俺は足に力を入れていく。


 「ひぃ!?や、止めろ!!!我を殺すな!我には価値があるぞ!人間!!我を捕虜にすればなんだって教える!!そ、それに我を仲間にするのはどうだ!?我はお前のゆ、言う事を聞くぞ!!ど、どうだ?」


 殺すと呟いた瞬間にボルビックの顔は引き攣り青ざめていく。そしてボルビックは怯えながら俺に対して命乞いをしてきた。


 「はぁ、最期くらいしっかりとしたらどうだ?何を言われようとお前は殺すぞ。まずは喋らないように頭を粉砕だ!!!」


 命乞いをするボルビックに対して拳を振り下ろした。


 それから俺は「がぁっ!!」「ぐげっ!!」「ぐがっ!!」「がぶっ!!」などと変な声を殴るたびに出すボルビックを無視して拳を振るっていく。


 ボルビックの頭部が完全にぐちゃぐちゃのミンチに変えると、もう一つの弱点である心臓を狙って思い切り体重を乗せて足を振り下ろす。


 足を振り下ろすごとに胸部の骨がミシミシと音を立てる。そして、ボルビックの胸部の骨を完全に破壊すると、そのまま足はボルビックの心臓を踏み潰した。


 「終わった……これで、終わった。」


 ボルビックの身体は灰に変わる。それを見届けて俺の身体に脱力感が湧き上がってくる。


 これでもうこの空間内に居るのは地球側の戦力である選ばれし者たちだけになった。


 俺は吸血鬼世界に続くゲートに一度目をやると、疲れた身体で地球側のゲートのある防衛陣地に向かって歩き出した。


 のだが、俺が森の中に入った瞬間に何処からか謎の声が聞こえてきた。


 『日本エリアのゲートの1つが防衛に成功しました。まだ日本エリアの防衛が行なわれている場所があります。助けに向かいますか?』


 そう声が聞こえて数秒経ち、俺の目の前には転移するのかどうかを示す【はい】【いいえ】の文字がある画面が開かれている。


 確か日本にはゲートが2つあり、その内の1つが大阪の大阪駅だったはずだ。


 その大阪駅のゲートを攻めるのは機械生命体世界。どんな敵なのかは分からないが銃火器を使って来るのではないかと思う。


 今の俺は疲労感もそこそこある。ボルビックを殺して一段絡したからか、俺の体内から湧き出していた進化エネルギーの増幅が収まって来ているからだ。


 今も行なわれている【超強化再生】の影響でお腹も空いている。それを思えば、今の俺が向かっても戦力にはならないだろう。


 「ボルビックから聞いたことの報告もあるし、まずは戻るか。」


 俺は地球側のゲートのある防衛陣地で今後どうするのかを決めるために、まずは防衛陣地に向かうことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る