第33話

 一気にボルビックとの距離を詰めた俺は血のレイピアを構えるボルビックの懐に入り込むと、ボルビックの腹に掌底の一撃を決める。


 「ゴハァッ!!??」


 ボルビックは横に吹き飛び地面を数回バウンドすると生えていた木に衝突した。


 もちろん俺の一撃を受けて吹き飛んだボルビックを受け止める形になった木はへし折れて地面へと倒れ込む。


 ズンッと音を立てて地面に落下した太い木の幹が落下した音が辺りに響くが、俺はそんなことお構いなしにボルビックへと詰め寄った。


 腹を押さえ血のレイピアを杖の代わりに立ち上がろうとするボルビックへと追撃の蹴りをお見舞いしてやるが、今回の蹴りにはボルビックも反応して血のレイピアを盾の代わりにしてくる。


 けれど、進化エネルギーに寄って肉体が通常の人間よりも上位に進化した俺の蹴りをボルビックの血のレイピアは防ぐことは出来なかった。


 血のレイピアの刀身は砕け散り、そのまま俺の足はボルビックの頭部に直撃する。


 グシャビチャビチャ、そんな音が森の中で起こる。俺の蹴りがボルビックの頭部を砕いた音だ。


 そしてドチャリと音を立てたボルビックが地面に倒れるのだが、流石は吸血鬼と言うことだろう。


 ボルビックの頭部はすぐに再生しているのか、少しずつだが確かに頭部が再生していく。


 これが眷属たちを指揮していた吸血鬼ならば、この一撃で死んでいただろうが、男爵級吸血鬼のボルビックはまだ生きている。


 それでも再生速度はかなり遅いので隙だらけだ。このままボルビックを仕留めようと思った。だが、コイツには苦しんで死んで欲しい。


 ボルビックを拷問する様に痛ぶりながら殺すことを決めた俺はボルビックの再生途中の頭部は狙わずにボルビックの四肢を潰すことにした。


 まずは逃げられないようにボルビックの足から潰していく。関節を狙って思い切り足を振り下ろすことで足の関節を砕く。これでボルビックは簡単に逃げられないだろう。


 そのまま両腕の関節を肩も含めて壊しているとある事に気が付いた。それはボルビックの再生が頭部に集中していたことだ。


 どうやら吸血鬼は生命維持に必要な部位の再生が優先されるみたいだ。他の吸血鬼では頭部を砕いて心臓を潰せば殺せるのでこの事は知らなかった。


 「まあこれでボルビックも逃げられないか。あとは頭の再生を待つだけだな。」


 武装の兜の中でニィーと口角を上げてボルビックの頭蓋骨に筋肉が付いていく姿を見ながら俺は嘲笑う。


 そしてボルビックの頭部は髪の毛も含めて完全に再生した。


 「よう、目が覚めたか?」


 「お前ぇええ!!!この我を誰だと思っているのだぁあ!!!!」


 再生が終わったボルビックに嘲笑混じりの声色で質問すれば、ボルビックは格下だった人間に恐怖が多少混じりながら怒声を上げる。


 「男爵なんだろ?だからどうしたんだよッ!!」


 「ガハッ!?」


 足を真上に蹴り上げてボルビックの顎に蹴りを直撃させる。


 上半身を跳ね上げたボルビックの首を掴むと、勢いそのままにボルビックの腹部を拳で殴打する。


 1回、2回、3回と繰り返し殴れば、その回数分ボルビックの口から血が噴き出し俺の武装がボルビックの血液で汚れていく。


 「エナジーナックルッ!!!!」


 「あがぁあああああああ!!!!!!!」


 左拳に収束させた進化エネルギーを使用した【エナジーナックル】をボルビックの腹部へと直撃させる。


 すると、ボルビックは絶叫を上げながら上半身と下半身に分かれてしまった。


 そのまま下半身は【エナジーナックル】の衝撃で吹き飛んでいくのだが、首が引き千切れるほどに強く掴んだお陰で上半身は吹き飛ばされずに済んだボルビックを地面に落とす。


 「あぁぁあ!!!身体がぁああ!!!!!よくも!よくもぉおおお!!!!!!!」


 「まだ俺を喋れる元気があるんだな。まだまだ痛ぶれそうだ。続きを始めるぞ。」


 「ぉおおああああ!!!!!!!!!」


 絶叫を上げるボルビックを俺はまだまだ痛め続けていく。

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