第32話

 東条の亡き骸を抱えてクレーターから出た俺は一度周りを確認する。クレーター周りには吸血鬼だった灰や眷属たちの亡き骸ぎ地面に大量に転がっていた。


 俺はその中を歩きながら選ばれし者たちの拠点になっている防衛陣地へと移動する。


 その道中では吸血鬼の眷属の亡き骸だけでなく、地球の戦力であった選ばれし者たちの亡き骸も転がっていた。


 そして歩いて進んでいれば、防衛陣地の元へと選ばれし者の生き残りが集まっており、クレーターから来た俺が向かって来ている事に気が付いているのか騒ついているようだ。


 そんな集団の中から何人かの人たちがこちらに向かってやって来る。


 「お、お前は敵なのか!!」


 オドオドと怯えた様子で男は聞いてくる。どうやら俺が怖いようだ。そう言えばと未だに身体から溢れ出している進化エネルギーを体内に収めるようにすれば、進化エネルギーは身体の中へと消えて俺の身体から放出されていた緑色のオーラは消える。


 「これで良いか。俺は敵じゃない。それで今はどうなっている?ゲートの外に吸血鬼たちが行ってはないのか?」


 「あ、ああ。そ、そうなのか。ゲートの外には出ていないが、それでも後衛や生産組の者たちに大きな被害が出てしまったよ。」


 「そうか。」


 それから俺は怯えも止まった自衛隊員の男と話し合い、これからどうするのかなどを話して終わるとある頼みをすることにした。


 それは東条正樹の遺体を東条正樹の家族の元へと届けるということだ。


 流石にこんな場所で放置するなんて助けてくれた東条にしたくはない。俺が何とか東条の家族を探せるというのならそうしたいが、そんな力はないのだから、こういう事は国の組織に任せておいた方が良いだろう。


 「わ、分かった。必ず家族の元に返します!!」


 「頼む。コイツは命の恩人だからな。」


 威圧的に言ったら若干怯え出したが、これで東条の遺体は家族の元へと届くだろう。


 「それじゃあ俺は行く。」


 「ど、何処に?」


 「決まってるだろ。襲撃して来た吸血鬼のボスを殺しにだよ。」


 「ヒィイ!!!!」


 身体からまた進化エネルギーが放出されて緑色のオーラとして視認出来るようになると俺と話をしていた男は悲鳴を上げ、その後ろの者たちも恐怖で腰を抜かしている者もいた。


 東条の遺体を渡すと俺は男爵級吸血鬼ボルビックが逃げて行っただろうと思われる森へと向かって歩き出す。


 そんな俺を止める者は誰も居らず、俺が去った後には自衛隊員たちが東条正樹の遺体を回収して防衛陣地へと戻って行くのだった。


 「この先か……ボルビックが居るのは……。」


 草原と森の境目にたどり着いた俺は辺りに注意しながら森の中に入っていく。そして森の中を歩いて進んでいる。


 集団で吸血鬼の眷属たちが通ったお陰で向かうべき方向が分かりやすい跡を発見し、ゲートを目指して進んでいたのだからこのまま進めば、吸血鬼世界に繋がるゲートがあると思われる方向へと進んで行く。


 踏み荒らされた草の上を歩きながら進むことどれくらい経ったのかは分からないが、俺は地球に繋がるゲートと同じ物の前で座り込んでいるボルビックを発見する。


 「見つけたぞ!ボルビック!!」


 「な、何で貴様が居るのだッ!!」


 俺に気が付いたボルビックは恐怖の顔に表情を変えると怯えているのか身体を震わせている。


 「もちろん決まっていろだろ?お前を殺しにだよ。散々俺たちの事を馬鹿にしやがって、お前はここで今日俺に殺されるんだよ!!」


 「ふ、ふざけるなぁああ!!!!!」


 ボルビックは手元に血のレイピアを生み出すと絶叫しながら俺に向かって襲い掛かってきた。


 その動きは早いが今の俺には充分に視認することが出来ている程度の速さだ。


 そんなボルビックへと俺も地面を踏み込んで一気にボルビックとの距離を詰めて行った。

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