第31話

 「ボルビック様を決して追わせるな!!ここで何としても抑え込むんだ!!!!お前たち行くぞ!!!!」


 ボルビックよりも階級は下だが、この場の吸血鬼たちの中では1番上の吸血鬼が指揮を取って膨大な緑色のオーラで黒金の鎧姿が辛うじて見える俺へと向かって襲い掛かる。


 クレーターを駆け降りてくる眷属たちが向かってくるが、眷属たちの動きは俺の目から見たら遅すぎると感じた。


 ゆっくりとした動きで迫って来ている眷属たちに向かって、俺は一歩踏み出して距離を詰める。


 「エナジィィーナックルゥウ!!!!」


 接近して1番距離の近い吸血鬼の眷属であるオオカミへと膨大な進化エネルギーを纏った拳を突き出した。


 ズドンッと大きな爆音が鳴り響くと、【エナジーナックル】が直撃したオオカミの眷属の周囲と後方へ衝撃波が撒き散らされる。


 その衝撃波に寄って数多くの眷属たちは吹き飛ばされ身体をズタボロにしながら地面に墜落していく。


 「もう1発!!」


 左拳に進化エネルギーを集めながらもう一度だけ吸血鬼の命令でこちらに向かって来ている眷属へと放ち、先ほどのように多くの眷属を衝撃波を伴う一撃で殺した。


 たった2回の攻撃で降りて来ていた眷属の大半はクレーターから吹き飛ばされ、クレーターの中には俺と死んでいる者しか居なくなる。


 ボルビックを追い掛けたいが幾ら一撃で殺せると言っても、ここまで大量に集まって来ている吸血鬼の眷属と吸血鬼たちを置き去りにして追い掛けられない。


 それに今もクレーターで倒れ伏して亡くなっている東条正樹を放置することも出来ない。出来ればあの時にボルビックを殺せていれば良かったのだが。


 とにかく今は押し寄せて来ている吸血鬼の眷属たちを倒すことに集中する。今も戦場全てから続々と集まって来ている眷属たち。


 上空も吸血鬼の眷属が集まった影響でクレーター内部は月明かりが差さない空間になっている。


 それでも俺の目には薄っすらと視認できる眷属たちを殺し続けていると、「あの化け物を死んでも殺せぇえええ!!!!!」とクレーターの縁から聞こえて来た。


 それを合図に上空に集まって来ていた眷属たちが一斉に俺に向かって急降下してくる。


 その勢いは地面に衝突するのも気にしないくらい早く、急降下している眷属たちも途中で停止するなんて考えていないのだろう。


 「エナジーナックルッ!!!」


 進化エネルギーを右拳に収束させた俺は上空に向けて拳を振り抜く。


 何もない空間に向かって振るわれた【エナジーナックル】は上空に向けて衝撃波を発生させた。


 衝撃波は上空に向けて移動すると辺りの空気を巻き込みながら、急降下していた吸血鬼の眷属たちを巻き込んで次々に殺していく。


 そして上空からクレーターへと眷属たちの血液や果汁が降り注ぐことになった。


 血液の臭いとスイカやメロンの果汁の甘い匂いが混じり合った悪臭が辺りに立ち込めるが、クレーターに次々と降りてくる吸血鬼の眷属たちは気にしている様子をまるで見せないで狂っているようだ。


 地上の眷属を殺し、上空の眷属を殺し、降りて来た吸血鬼を殺して殺して殺していると等々俺の元までくる者たちは数えるほどになった。


 「チッ、あとはお前らだけだ。ボルビックを逃したんだ。お前らくらいは殺してやるよ!!」


 自身と同じ吸血鬼や眷属たちを殺し続けた俺に残っている吸血鬼たちはまるで化け物を見る目で腰を抜かして這いつくばって逃げようとする。


 あっ、うっ、などと声を漏らすだけの吸血鬼たちの頭を潰し、心臓がある胸部を踏み潰して殺し終わると、俺はクレーターに向かって飛び降りた。


 東条正樹の亡き骸がある場所を意識しながら戦ったお陰で簡単に見つけ出した。俺は東条の亡き骸を抱えるとクレーターを上がる。

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