第28話

 「ここからは行かせないぞ!」


 「どけ、死に損ない。我が様があるのは貴様の背後の奴だけだ。」


 大盾を構えながら吸血鬼の親玉に対峙する男の姿はいつ倒れても可笑しくない状態だ。それでも俺を守るために立ち上がる姿に俺は心の中で何かを感じる。


 俺の様に外付けの闘争心に突き動かされている部分がある者とは違う。自分の意思のみで今回のこの場所の吸血鬼たちの最高指揮官であろう立ち向かえるのは俺には出来るかどうか分からない凄いことだ。


 「あんたは狙われてない。逃げれば助かるかも知れないんだぞ?なんで俺を助けるんだ。」


 「人を助けるのに理由なんかいらゴフッないだろ。それに俺のゴフッ傷じゃ死んじまう。それなら、あの吸血鬼に傷を付けゴハッたお前の回復する時間ぐらゴフッい稼いでみせるさ。俺じゃあアイツをゴホッ倒せないからな。」


 途中途中で咳き込み口から血を吐き出しながらも男は俺の質問に答えてくれる。


 俺は外付けの闘争心だけじゃなく、自分自身の感情すらも戦いが楽しくなって来ていたのに、目の前の男は俺が吸血鬼のボスを倒してくれると言う打算もあるのかも知れない。


 だけど俺を助けたいと言う思いで目の前に立って吸血鬼のボスから庇ってくれている。


 「くっくく、笑わせてくれる。お前に何が出来るのだ?自身の仲間を我に呆気なく殺されたお前に。」


 「黙れ!!俺は確かに仲間を助けられなかった。だが、ここは絶対に通さないぞ!!お前に勝てる者を絶対に守ってみせる!!!ゴホッゴホッゴホッ……。」


 言い切ったと同時に口から血を吐き出している男に吸血鬼のボスはニヤニヤとして嘲笑う。


 男と吸血鬼のボスが答弁をしている間にも俺の身体は再生していく。それも今までで1番肉体を強化して。


 再生して身体を少しずつ動かす度に肉体に宿る力がより強くなるのを感じながら、完全に再生が終わる前に事態が進まないことを祈りながら、目の前の俺が凄いと思った男が殺されない内に増大していく進化エネルギーが消費されて【超強化再生】の力が上がり再生速度が上昇し始めていく。


 「我に生意気なことを言ったお前には多くの人間たちが死ぬざまを見せてやろうと思ったが、お前の背後の危険分子と一緒に串刺しになるが良い!!」


 吸血鬼のボスが両手を天に向けてあげると、その両手のひらから血が吹き出して巨大な血の槍が作り出される。


 血の槍は高速で回転し始めながら狙いを定めて放たれた。


 「絶対に俺の背後には通さないぞ!!防げッ!!!ビックシールドォォォォォォォォォッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 大盾の縁を地面に叩き付けると男の必殺技なのだろう【ビックシールド】を発動した。


 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ。


 男爵級吸血鬼ボルビックの放った血の槍と男の必殺技の【ビックシールド】がぶつかり合い、必殺技の【ビックシールド】が血の槍に寄って削られていく音が聞こえる。


 このままボルビックの血の槍が【ビックシールド】を突破すれば、俺を守る男諸共死ぬことになるだろう。


 俺の身体の末端が少しずつ動かせる様になり、あと数十秒の時間があれば今の俺なら再生が終わるはずだ。


 早く、早く、早く再生が終われと祈る。動くことさえ出来れば、俺も目の前の男も助かる道があるはずだから。


 「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおと!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリピシッガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリピシッガリガリ。


 ガリガリと削れる音以外のピシピシと言う音が【ビックシールド】から聞こえ始めた。視界に映る【ビックシールド】が少しずつひび割れを起こし始めていたのが見える。


 

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