第27話

 「チッ、我が部下と眷属どもを殺し回っている男が来たか。」


 「お前が侵略者どものボスだな。」


 流石は吸血鬼たちのボスだ。その姿を視認してからコイツには勝てないと本能的な部分が理解する。


 それでも俺自身と外付けの闘争心は熱く冷静に勝ち筋はないかと吸血鬼のボスを観察していた。


 「そうだ。我が名はボルビック。男爵級吸血鬼ボルビックだ!!!」


 「俺はりょう龍崎りゅうざき亮だ!!行くぞ!ボルビック!!!」


 クレーターを一気に駆け降りて男爵級吸血鬼ボルビックの元まで走り出した。


 今までで1番に進化エネルギーを増幅させながら接近した俺は先制の一撃だと必殺技を繰り出した。


 「エナジィィーーナックルゥゥーーーーーッ!!!!!!!!!」


 右拳に進化エネルギーを収束させた今の俺の最強の一撃が男爵級吸血鬼ボルビックに向かって繰り出された。


 「ふんッ!!ぐぉおッ!!!??」


 【エナジーナックル】を男爵級吸血鬼ボルビックは拳を掴んでみせた。だが、【エナジーナックル】の威力だけではなく進化エネルギーで強化された【銀の鏃】の力もあってなのか、男爵級吸血鬼ボルビックの拳を掴んだ手のひらは焼け爛れ一部は灰へと代わり始める。


 「な、なんだこれは!?」


 「そんな物はどうでも良いんだよぉお!!さっさと死ねぇええ!!!!もう1発だぁああ!!!!!」


 右拳は男爵級吸血鬼ボルビックに掴まれている。だが俺にはもう1つの拳がある。左拳で【エナジーナックル】を行なってボルビックを殴りに掛かる。


 「掴まなければ良いだけだ!!!」


 「うぐぁッ!??」


 男爵級吸血鬼ボルビックは進化エネルギーを纏う左拳には触れないように腕を弾いた。


 男爵級吸血鬼ボルビックに弾かれた左腕はそれだけで武装の装甲を破壊し、衝撃だけでその下にある腕の皮や筋肉に骨をズタズタに引き裂いてしまう。


 「我に傷を付けるとは許しがたい事だ。人間風情が舐めたことをしてくれたなぁあ!!!!」


 「がはぁッ!!???ぐはぁッ!!!?」


 右拳を掴んでいた手を離したボルビックの蹴りが俺の腹部に直撃した。口から血を吐き出し激痛を感じる暇がないほどに吹き飛ばされクレーターの中に新しいクレーターが出来上がる。


 腹部の装甲は完全に破壊され、腹も内臓が潰れているのか明らかにへこんでいた。


 「いッ、がぁあッ!!???」


 クレーターのなだらかな坂は新たなクレーターを作り、そのクレーターの中央には全身の皮膚、筋肉、骨などがズタボロになって痛みに悶える俺の姿があった。


 「弱い今でも我に傷を付けるとは危険だな、お前は。ここで確実に殺して置かねば。」


 ボルビックの手のひらから噴出した血液が形を変えてレイピアへと姿を変える。


 ゆったりとした動きで足を進めながら俺の元へと向かうボルビックの姿が痛みでチカチカとしている視界に映る。


 俺は内心でまだかまだなのかと再生が終わらないのを焦りながら意識的に進化エネルギーを使って【超強化再生】を発動していく。


 武装の全身鎧の修復はすぐに金属が増殖しながら再生していくことでボルビックから受けた破損は修復が完了していた。


 だが、俺の肉体はまだ再生が終わっていないのだ。これまでに受けたダメージよりも多く全身を生まれ変わらせるレベルで再生を行なっている影響のせいだと【超強化再生】の力でなんとなく理解する。


 そして今回の【超強化再生】で再生された際に行なわれる強化は今までの比ではないほどに強化されると理解している俺は早く強化再生が終わるのを待つが、それよりも早くボルビックが俺にトドメを刺すのが早いだろう。


 もっと!もっと早く!!と思っていてもこれ以上の速さで強化再生することは出来ない。


 このまま終わるのかと心の中で呟いた俺に影が覆う。なんだと下を向いていた視線を上げると、そこには全身から血を流していた大盾使いの男の姿がそこにはあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る