第22話
「極度の疲労と栄養失調ですね。話しを聞いた限り、酸欠の影響がないのが不思議ですが。」
「そうですか。」
これだけで済んでいるのは【超強化再生】の力による物だろう。今回の強化で無呼吸状態での行動も少しは長く出来たかも知れない。
「栄養のある物を食べてしっかり休めば問題ないですね。栄養剤です。これを飲んでください。」
「分かりました。」
渡されたのは市販で販売されている栄養剤だったが、誰がこう言う物を持って来ていたのだろうか?それともゲートの向こうから支援物資として運ばれて来た可能性の高そうだ。
渡された栄養剤を一気に飲み干せば、身体の中に足りない栄養が補充されたからか、力が飲む前よりも入る気がした。
「炊き出しがありますから、あとはそこで食事をして休憩を取ってください。」
「そうします。」
「それではお大事に。」
救護所から出た俺は俺を運んで来た物が居ないかと見回せば、荷物運びをしている者たちの中に発見した。
「先ほどはありがとうございました。」
「ん?ああ、いえあれが仕事ですから。」
荷物持ちの仕事をしている最中と言うこともあり、お礼を言って済ませると、俺は炊き出しの行なっている場所へと向かった。
そうして炊き出しで貰った食事を食べ、何度もお代わりをして身体の中に栄養を蓄えていく。
やはり栄養剤だけでは足りなかったからだろう。食べれば食べるほどに身体に力が漲っていった。
身体を休ませて食べ続け、食べた物を消化してトイレに向かう。そんなことを繰り返すこと数回経った頃、いよいよ3度目の襲撃が起こったことを知らされる。
「ふぅ、ごちそうさま。」
これだけ食べて栄養に変えれば【超強化再生】を使用しても問題ないはずだ。誰かのユニークスキルなのか、それとも武装なのかは定かではないが、吸血鬼が従える眷属たちが一斉に向かって来る映像が上空に映し出されている。
その映像を見る限りでは3度目のこの襲撃が最後の襲撃だと思われる。森と草原の境に集まっていた侵略者たちは全てゲートを目指して移動を開始したのだから。
「はぁ、本当に多いな。」
映像に映っている侵略者の数は2度目の襲撃よりもその数が多く、その分だけ眷属を従わせている吸血鬼の数も多いのだろう。映像に映っているだけで最低でも10人の吸血鬼の姿が見える。
そしてその中でも一際目立っている吸血鬼がいる。まるで映画や小説の中から飛び出てきた吸血鬼のイメージそのままの貴族のような吸血鬼だ。
俺は直感であの吸血鬼が今回のこの場所での侵略者たち全て従えている吸血鬼なのではないかと思った。
映像越しでも何故だか強い奴だと背筋が泡立つ感覚がし、俺が殺した2人の吸血鬼よりも断然に強い相手なのだと感じる。
自分よりも明らかな格上の存在に俺本来の心は逃げたい、怖い、死にたくないと思ってしまうが、ここでも【闘争の化身】の外付けの闘争心という感情が本来の感情を上回っていく。
戦場に行く前にトイレに向かい出す物を出して手を洗っていると、手洗い場に何故かある鏡に写っている俺の顔は何故だか笑っていた。
その笑っている俺の顔を見て、俺は動きを止めて鏡を凝視してしまう。
それを見た俺は恐怖や死にたくないと思っていても外付けの感情以外にも俺の本来の心にも戦いを楽しんでいる感情があるのではないかとだ。
そうして思い返すのはこれまでに起きた今日の殺し合いだ。その中で確かに俺は恐怖の感情を覚えていたが、段々と戦っている度に恐怖よりも戦うことその物を楽しんでいたのではないかと思ってしまう。
そう思えば思うほどに確かに俺は楽しんでいた思った。特にあんな無呼吸で攻撃を繰り返すなんて恐怖の感情が本来の心の大部分を占めて入れば出来ることではない。
流石に相手を殺すこと自体を楽しむことはしていないが、これは地球に戻った時にこのままだと不味いんじゃないかと思うが、一先ずはこの事を棚上げすることにした。
顔を洗って笑っていた表情を戻すと、俺は武装を展開して最前線へと移動を開始する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます