第48話 宣戦布告!?

「え、なんで、え?」


 ハルカと皐月を交互に見て呆然と立ち尽くす光希。あちゃー、見られちゃったという顔で黙るハルカに代わって皐月が口を開く。


「お知り合いですか?」


「まあ、うん。ソウダネ。知り合い」


「ねえ、ハルカその人と付き合ってるの?」


「……えっと」


 ハルカは気不味い顔をする。なにせ皐月との関係性を明確にしていないのだ。


「なにそれ……俺には私しかいないって前に言ったじゃん。軍学校であんなに荒れてたハルカの面倒見たの私なのにッ」


「そんなこと言ったっけ俺」


「言ったよ!!」


「あ、ハイ」


「え、なにあれ」「修羅場じゃね?」「浮気?」「てか女の子可愛くね?」「ホントだ」「めっちゃ着込んでる娘いるけど」「でもあの子もオーラが半端なく可愛いな」「男しね」


 男一人に女二人の構図。光希が声を荒らげたことで、明らかなる修羅場は周囲の注目を集めだす。


 そんな中、探索者である皐月は目の前の少女の声に聞き覚えがある事に気が付いた。もし少女の正体が予想通りならここで注目を集めるのはまずい。


「あの、とりあえず場所を変えませんか?」


「え……ぁ、あ、そうしたい、かも」


 遅れて自らの状態、周りの目に気付いた光希がその提案に乗る。そうして三人は場所を移すこととなった。


 今の三人が人の目を気にせず話せる場所はそう多くない。ゆえに向かった先はーー







 皐月の家であった。


「え、いいんですか?」


「私は構いません。どうぞ」


 玄関を開いてさっさと家にあがる皐月。その後ろ、慣れた様子で「お邪魔しま〜す」と皐月に続くハルカを見て、光希はよりいっそう顔を歪める。


 慣れるくらいには通っているのだ。だってほら、明らかに最近買ったであろうお揃いのスリッパとかあるし……


「荷物はリビングに置いてください。とりあえずお茶の用意をして来るので、その後にお話をしましょう」


「俺も手伝うわ。買い物の荷物とかあるし」


「結構です。姫宮さんと一緒にいるのが気不味いから手伝いたいだけですよね?」


「……あっす」


「どうぞお二人で、ごゆっくり」


 そんなこんなでまずハルカと光希がリビングに向かう。ここでもハルカは慣れた様子で、家主でもないのに迷いなく歩き出した。


「ハルカ、リビングの場所わかるんだ」


「あーー、うん。まあ」


「どれくらい来てるの?」


「大体毎日だな」


 嘘を言っても後でバレる。だから真実を口にした。


「……私の家は来たこと無いのに」


「いや、あのね? 家ってそんな簡単に行くものじゃないでしょ?? ちゃんと順序ってものがあって」


「じゃあ如月さんとはその順序踏んだんだ!?」


「あーーーーー、後から踏んだというか状況がかなり複雑と言うか」


「なにそれ。訳わかんないよッ」


 ただただハルカがクズなだけである。ゆえに彼は気不味そうな顔で押し黙る。なにせ自分がクズな自覚はあるので。


 そんなクズことハルカは、ふと自分と光希の関係性について思い返す。そしてとある答えに辿り着いた。


「いや、けどそもそも俺等付き合ってなくね? そんな言われる事ないと……」


「けどすっごい思わせぶりはしてるよね!?」


「あ、ハイ」


 2秒で撃沈。これだからクズは立つ瀬がない。


「あの子とは付き合ってるの??」


「……………えっとぉ」


 いよいよマズそうな顔でハルカが答えに詰まった、まさにその時だった。


「おまたせしました」


 お茶と簡単なお菓子を持って皐月がリビングにやって来たのは。なんとかしてくれと少女に救いの目を向けるハルカ。


 しかしやって来た皐月は、それはもう喧嘩する気満々であった。持ってきたコップはおそろ、コースターもおそろ、おまけにハルカの真横、身体が触れ合う距離に座って堂々と今をときめくアイドル探索者に勝負を仕掛けた。


 そして開口一番、


「姫宮さんはハルカさんの何なんですか?」


 笑顔で言葉の右ストレートをぶっ放す。


(きゃぁぁぁあやめて!!!)


 隣でハルカは白目を剥いていたとさ。

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