第47話 今度こそ修羅場ですか

 画面に映るウルフヘアの地下アイドルは、所謂電波ソングのリズムに合わせて歌って踊っていた。


 かなりBPMの早い曲である。おまけにダンスの運動量が多い振り付けで、それを軽々とこなす彼女らはかなり運動神経が高い。


 というか高すぎる。


「これ探索者じゃね?」


「結論から言うとそうみたいです。探索者のアイドルグループってコンセプトでした」


「へえ。今はそんなのもあんのね」


 光希が超絶的な人気を得てから、インフルエンサー活動をする探索者は増加傾向にある。その多くは輝く前にひっそりと消えていくが、画面のアイドルたちはしっかり生き残っている側と言えた。


 なにせメンバー全員が可愛いのだ。そりゃ人気も出るだろう。特にセンターのウルフヘア、今回問題の少女のビジュアルが群を抜いて高い。


 光希や皐月には劣るが、そんじょそこらの一般人じゃ100人集めても勝てないだろう。そういうビジュだ。


「にしてもダンスすごすぎだろ。魔素侵食率高くね?俺より強いだろこれ」


「それはないです。ハルカさんは私のヒーローですから」


「あ、いや」


 世間ではヒトガタを撃破した探索者は正体不明となっているが、当然皐月はそれがハルカであると気づいている。


 今回は事情が事情なので仕方がないが、本来露呈してはならぬ機密事項ゆえにハルカは言葉を濁した。そんな彼を見て皐月は微笑む。


「そうですね。普段のハルカさんよりは強そうですね」


「その話はもういいから。本題に戻りましょ。スーツの交換対応とかはだめだったんですか?」


「はい。何故かそれも断られてしまいまして。一応、強制的に回収する手段もあるのですが、それだとかなり手続きに時間が掛かると思います」


「なるほどなあ。それだと本人に直接事情を聞くしかないか」


 ーーという訳で、ハルカはまず地下アイドルの現場に行ってみることとなった、のだが。その前にとてつもない厄介事に遭遇することになるのを、今のハルカはまだ知らなかった。



 翌日、いつものように皐月の家にお邪魔していたハルカは、夕食の買い出しで近くのショッピングモールに訪れていた。


 隣には皐月がおり、二人は恋人繋ぎでゆっくりと施設内を歩いている。


 今のハルカは垢抜けたとまではいかないが、以前よりかなりお洒落をしていた。長かった髪の毛はきれいに整えられ、服装もシンプルながら清潔感のあるもの。


 元から容姿は整っている方だったから、今なら超絶美少女の皐月と並んでいてもそこまで違和感はない。


 そんな二人は施設内でそれなりに注目を集めていた。イケてる男女(片方はギャンカスヒモ男)が傍目にもわかるほど恋人っぽい雰囲気を醸し出しているのだ。目立たないはずもないだろう。


 だから、『彼女』もまた、二人を見た瞬間に気が付いてしまった。


「え?」


 持っていたトートバッグを落として呆けた声を出すその少女は、目元まで深く帽子を被り、全身をロングコートで覆い、おまけにマスクとサングラスまで付けていた。


 姫宮光希(変装モード)である。


「ハルカ?」


「げっ」


 その声にハルカも気が付く。二人は誤魔化しが効かない程完璧に目を合わせてしまった。





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https://kakuyomu.jp/works/16818093081789893270


死に戻り前提の超鬼畜難易度ゲーのモブキャラに転生した件〜必死に生きてただけなのにループのイレギュラーとして主人公(美少女)に目を付けられました


新しく投稿始めたのでよければこっちも見てみて下さい!

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