第46話 2章プロローグ
「ふぁあ」
目覚めたハルカはぬっと起き上がると、まだ横で寝ている皐月を見下ろした。
起きてる時は気難しそうな顔をしているが、今は無防備な表情でふにゃふにゃと眠っている。そのギャップが可愛らしくてハルカは苦笑する。
そんな皐月だが、布団から出た手足は何の衣服も身につけていない。それどころか布団をめくって奥を覗くと下着しか付けていなかった。
ナンデダロウネ。
さて、今日だがーー機密作戦の解決、つまり皐月のトラウマを一部払拭した日から、既に2週間が経過している。その間、ハルカは半同棲とも言える頻度で皐月の家で寝泊まりをしていた。
「……不思議なもんだな」
ゴミ屋敷と化した彼の部屋とは異なり、女の子特有のいい匂いがする部屋。初日は緊張もしたものだが、既に我が家のような居心地の良さを感じている。
ベッドから起きたハルカは軽く朝の身支度を整えると、なんとクス人間とは思えぬ慣れた手つきで朝食の準備を始めた。
他人の家だと言うのに食器等を当たり前のように取り出す様は、二人の共依存ぶりがよくうかがえる。光希あたりに見られたら修羅場間違いなしだ。
そうこうしていると支度の物音で目覚めた皐月がキッチンに姿を現した。下着姿のままで。
そんな格好でも少女は恥ずかしがらないし、ハルカも大して反応を示さない。
「おはようございます」
「はよーっす」
「前から思ってましたけど、ハルカさんって意外と朝早いですよね」
「なんつーか、あんまり寝られない体質なんですよ」
「体調が悪いときもそうなんですか??」
「悪い時の方が特に」
「初めて聞きました。今は体調悪いとかじゃないんですよね?」
「全然へっちゃらですよ。あ、皿取って下さい」
皐月が渡した皿に炒めていたウインナーを乗せるハルカ。手慣れた連携プレイである。
「いつも朝食ありがとうございます」
「いや、まあ暇なんで。俺。皐月さんは学校とか仕事とか色々あるでしょう?」
「そうですねえ。なのでこれからもハルカさんに甘えていこうと思います」
ちゃっかり半同棲生活を続ける宣言。それに曖昧な笑みを返したハルカはちゃっちゃと他の支度も終わらせ、そうして5分後には日本人らしい食卓が整っていた。
「「いただきます」」
食事中はあまり会話がない。ハルカは異常な集中と速度でご飯を食べるタイプだし、皐月は皐月で食事中に多くを語るタイプじゃないのだ。
ただこの日は話さなければならない事があった。
「そういえば私のスーツの件なんですけど」
「あ、回収できました?」
皐月がハルカの配信を通して販売した強化スーツは、無許可でレーダーを搭載していたため、それが露呈する前に回収をする必要があった。
これはその件での話題だ。
「はい。あらかた回収出来たんですけど、一つ回収を拒否されてしまいまして」
「不良品扱いで交換とかは?」
「それももう試しました。ですが相手はそれでも構わないから、今スーツがないと困るんだと…」
「へえ、お金無いんですかね」
まるで人ごとのようにそんなことをのたまうハルカ。今の彼は光希を助けた軍事作戦は機密作戦の報酬を得て、そこそこのお金持ちになっている。
まあ、今週末には競馬配信が控えているけれど。
「どんな人なんですか、そいつ。俺が取り返しに行きますよ」
「えっと、この方です」
既に準備をしていたのだろう。皐月は手元のタブレットに情報を載せてそれをハルカに見せた。
「なになに……地下アイドル?」
画面に映っていたのは、狭いライブハウスで歌って踊る、ウルフヘアの女の子だった。
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