第24話

「魔物が攻めてきたぞ!!」

 レッドムーンテンペストの始まりの合図。私も含め全員が戦闘体制に入った。

 まずはルイさんが防御結界をひとりひとりに張った。

 そしてロヴェルさんが宣言した通りに雨が降ってくる。

 私はというと少し離れたところから箒に乗って遠視という魔法を用いながら様子を伺っていた。

(うん、これなら心配ない。異常な数ではあるけれど大丈夫。怖くない怖くない。私は私だから。ここは単なる始まりに過ぎない。私にはこの後にやらないといけないことがあるから)

 私は魔法を放とうとしたときに遠視で1人の男の子が近くにいるのに気づいた。歳は私よりも上。金髪で水色の瞳だった。私は咄嗟に男の子の方に向かった。

「あ、すまない。お忍びでここに来ていたんだ。まさか遭遇するとは思わなくてな」

「……こここ、ここにいては危険ですので。いいい、急いで逃げてください!

「ああ、すまなかった。帰り道はわかるから安心してくれ」

「あ、今から結界張るので……。よし、これで安心です」

 私は素早く彼に結界を張った。

「君は無詠唱で魔法を使えるのか?」

「ははは、はい。とりあえず……逃げてください」

 金髪の男性が背を向けて歩いたところでまた振り返ってこちらを見た。

「目深にフードを被っている親切な魔術師さん。名前はなんというか教えてほしい」

「ミ、ミーシャでででです!」

「ミーシャというのか。覚えておく。今日はありがとう」

 これがミーシャとアーサーの出会なのであった。(ミーシャは覚えていない)

「ミーシャちゃん。大丈夫?何かあったの?」

「いいい、いえ!ななな、何もございません!」

「そう?ならいいけど……」

 金髪の青年が見えなくなったところで<星読みの魔術師>ミルキーがきた。どうやら私に何かあったのか心配してくれたらしい。

「とりあえずちょっと事態が怪しいのよ。去年、異常に魔物の数が多くて混乱状態になったけど、まだ対処に慣れてないのか少し押されてきててね……」

「大丈夫です。私がやります」

「え?ちょっとミーシャちゃん?!」

 ミルキーさんが慌てて止めようとするが、私は魔物の群れの最前線へと向かった。

「おい、ミーシャ!なにきてんだ!バカか!」

 最前線では死闘が繰り広げられていた。幸いルイさんの結界のおかげで誰も怪我せず住んでいる。ちなみに私に怒ったのは<風霧の魔術師>エリックさんだった。

 エリックさんの後方には<雷光の魔術師>ラムドさんもいた。

「何しにきたんだい?」

 ラムドさんも私がきたことに怒っているようだ。しかし私は動じない。

「ここは全て私に任せてください」

「な、何を言って……」

 エリックさんは私と最初に会ったときと雰囲気が違うことに気づき驚いた。

 私は人見知りで引きこもり。だけど魔法を使う際は雰囲気が変わる。対象を冷たい目で見据え冷酷な表情をする。それがミーシャだ。

「ここはミーシャさんに任せた方がよさそうですなぁ」

「ルイ。で、どうすんだ?」

 突如現れたルイさんはニコニコと涼しい顔をしていた。苦戦しているとは思えない表情だ。

「先ほども言った通りです。ここはミーシャさんに任せます」

「分かった」

 エリックさんの了承を得ると私とルイさんは頷きあった。

「……グランドクロス」

 グランドクロスとは、黄道十二宮上で4つの惑星が十字型に並ぶ配列を指す。この魔法は複雑で無詠唱で使えるのは私しかいない。

 こうしてミーシャの放った魔法で魔物の群れは消滅してレッドムーンテンペストは幕を閉じたのであった。
















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