第10話

 部屋は同室。私は緊張しながら最後の荷物を運び終えた。と、言っても荷物は鞄ふたつのみ。それなのにアーサー様は手伝ってくれた。それはそれで嬉しいのだが……。

(愛が重いような……)

「ミーシャ。これから国王に挨拶に行かなければならなくてな。着いた早々、悪いが一緒に来てくれないか?」

「……へ?」

 私はその場に硬直してしまった。何せ人見知りで引きこもりの私が国王に挨拶なんて無理に決まっている。

(どどどど、どうしよう!)

「緊張しなくても大丈夫だ。国王は悪い人ではないし、私たちの婚約にも賛成してくれた」

 私はこのとき思った。もう引きこもりで人見知りであることを国王に訴えて自分はアーサー様に相応しくないと伝えればいいと。

「わわわわ、分かりました!」

「では、行こうか」

 アーサー様に手を差し出され震える手でアーサー様の手を握った。

(あれ?震えがおさまった?)

 誰かの手を握るなんて滅多になくいつも震えていた。なのにアーサー様の手を握った途端、震えがおさまったのだ。

(なんでだろう?)

 そして私とアーサー様は王室についた。

「よく来てくれた。<天才魔術師>ミーシャ殿」

「えーと、そのお初にお目にかかります。センラ・クラウン様」

 国王の名前はセンラ・クラウン様。センラ様は幼いときから国王に必要な勉学などを厳しく教育されており、国民的支持も高い。王妃様は第二王子が生まれたときに亡くなっている。

 そして私はずっと引きこもっていたのでこれまでに王宮で開かれていた魔術師との交流会には参加していなかった。だから国王にも会っていない。

「そんなにかしこまらなくて良い。今日はアーサーとの婚約の件について話したいと思っていたのだ」

(ここで話すしかないよね)

 私は国王とアーサー様には申し訳ないと思いつつあの件について話した。

「その!わわ、私にはアーサー様にはふさわしくないと思いまふ!」

「「?!」」
















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