第8話
「今日から私たちは同室となるから…よろしく頼む」
「ははは、はい。そのえーと、同室ではなく……」
同室を断ろうとしたところアーサー様がしょんぼりとした顔になった。
「私と同室はそんなに嫌か?」
「いいいい、いえ!めめめめ、滅相もございません!」
私は慌てて否定した。
(なんというか愛が重い気がする)
私はとんでもない人に好かれてしまったんだろうと思う。早く婚約破棄がしたいが、しょんぼりとしてしまった顔を見るのはつらい。
(どうしよう。婚約破棄すらできなさそう)
そもそも愛が思いゆえに婚約破棄の申し込みすら話題に出せない。話題に出したところでアーサー様が傷つくのが目に見えている。
「では行こうか」
アーサー様は私に手を差し出しエスコートしてくれた。
(私をどれだけ愛しているのだろうか)
私は恋愛と無縁だと思っていたのでまさかこうなるとは考えもしなかった。
男性が女性にエスコートするのは当たり前だが、初対面でキスされているので以前から私のことを知っていることが考えられる。
(一応大陸中で私は有名になってるけど、顔はフードで隠してるし引きこもってるし、知らない人も多いはず。なのにどうして知ってるんだろう)
私はアーサー様のことについて考えていると、アーサー様が気になったのかこちらを振り返り心配そうに聞いてきた。
「どうした?何かあったのか?」
「あ、いえ。その……アーサー様のことをか、考えてい、いました」
素直にそう告げるとアーサー様は驚いた様子でこちらを見てきた。
「私のことを?!」
「すすす、すみません!」
「なぜ謝る!ミーシャが私のことを真剣に考えてくれていたなんて嬉しいに決まっているではないか!」
(誤解してる……)
私は別のことを考えてたんだけどと思いつつも苦笑いしながらその場をやり過ごした。
ーーーーー
「ここが俺たちの部屋だ」
「きれい……。広い……」
案内された部屋はとても豪華で2人部屋以上の広さがあった。しかし、気になることがひとつだけあった。
「あああ、あの!ベッドが……なぜひとつしかないんでひょうか!」
「いずれは夫婦になるのだから一緒になるのは当たり前だろう?」
「そそそそ、そうですか……」
私は顔を背けながらこれからどうしようと焦っていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます