第2話 「終わり」は新たな「始まり」を招く。




高校入学して間もなく、中学の時に付き合っていたトモと連絡が取れなくなった。


中学の時はそれなりに周りにも知られた仲だった・・・とは思うけど、受験で別々の学校に進学することになり、卒業後は彼女も実家を離れて暮らし始めたせいもあってか、ようやく会えたのはGWの時。

で、それから手紙が1回届いたけど、それっきり。

手紙の内容からしても、所謂「フラれた」という状態だ。




で、今は6月。

うちの高校は文化祭の準備中。今日も遅くなりそうだ。

そもそもうちは県下でもそれなりの進学校なのに、こーいうイベントはこれでもかとばかりに「3年生を中心として」情熱を傾ける。・・・いいのか、これで?

ともかく、上級生たちの迸るエネルギーを感じつつ、我がクラスの準備をしていたわけだけれども、一つ問題が。


この学校・・・「安古市高校」(「あんこいち」ではない。「やすふるいち」と読む。)は、けっこうな高台に設置されているせいで、途中からバスに乗り換える必要がある。どのくらいの高台かというと、坂を降りたところを「下界」というくらい高低差がある。登校するだけで一苦労だ。


「なぜこんなところに学校を作った?」と問い正したいところだが、あたりを見回せば住宅地で、なんなら高校より高いところに小学校が設置されている。ここら辺は山の斜面に住宅地が広がっているなんて珍しくもないので、


「ここなら高校設置してもいいんじゃね?土地価格も上がるし」


「でもこんなとこに学校造っても誰も来たがらんじゃろ?」


「ほいじゃあ、進学校として最初からスタートしたらいいじゃろ?」


「そりゃあええ考えじゃ!」


・・・という議論があったとかなかったとか。



実際に開校10年も経たずに県内でも有数の進学校になってるあたり、あながち間違いじゃない話のような気がする。

そんな高台の学校から帰宅するのに、もしバスがなくなったら歩いて「下界」まで行かなければならない。・・・30分くらいかけて。


「それは勘弁してほしい!」と思って今日は自転車で頑張って坂を上がってきた。

結構しんどかったが、それも帰り道で報われる!

よし帰ろ「あ、自転車で来たの〜?」


「・・・そうだけど?」


「そっかー。それじゃあさ、わたしんち、ここから15分くらいのとこだから送ってよ」


「マミさんや・・・。わたしゃあ、全く逆方向なんですけどね?」


「えー?女の子一人でこの時間に帰らせる気??」


「そうなの?ひっどーい!」

「お前送ってやれよー」

「そうだそうだー」


「いやなんでこんなに周りからも責められなきゃいかんのだ!?あーもー!わかった!送ってけばいいんだろ?」


「そーこなくっちゃ!やさしいねえ!」


「はいはい。それじゃあ行くぞ。・・・って家どこよ?」


「ん。あっち。」


「・・・マミさんや?何をしてるのかな?」


「自転車持ってて、『送ってくれる』といったら、こうするでしょ?」


「・・・坂道を2ケツで登れと!?」


「よーっし!れっつごー!」


「まじかよ、キッツイ!」


・・・俺何時に家帰れるんだろう??


「「ちゃんとおくてってねー」」

「「ガンバレ マミー」」


いや、どっちかってーと、頑張るのこっちなんですが!?

なぜそっちを応援してる?


・・・あ?はいはい、がんばりますよーコンチキショウ!

何気に女子との二人乗り、初めてなんだけどなあ。

ほら、女の子なら足おっぴろげるんじゃありません!!




◇◇◇


そんなやりとりまでは聞こえていなくても、様子を少し遠くから見ていたソフトボール部の女子が2人。


「・・・・なんか学校の門のところ、2人乗りしてる人がいるね。」


「ホントだ。・・・あ、あれ隣のクラスの人たちじゃない?男子はキャンプファイヤーでエールやってた人だよ」


「あの人かあ・・・後ろに乗ってる人、彼女さんなのかな?」


「そんな話は聞かないけどねー」


「ふーん・・・」


「なーに?気になるの~?カナ?」


「そんなんじゃないよー」





◇◇◇


「ねーねー?」


「はい?(ゼエゼエ)」


「彼女いるのー?」


「・・・できたて、ホヤホヤの、傷・・・えぐってきますなあ!この前フラれた・・・よ!(ペダルが重い!)」


「えーそうなんだ?じゃあ・・・」


「じゃあ?」


「付き合ってみる?」


「ハイ??」


「わ・た・し・と。」


そう言われたあと、後ろから回された腕に力が入るのを感じた。

後ろは・・・振り返れないな、今は。




さあ・・・どうしたもんだろう・・・







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