変化
母がいなくなった部屋で、私はわけもわからず涙を流す日々だった。
家族の寝室は解体され、私一人の部屋となった。
兄妹で使っていた小さな部屋は父の寝室となり、それまで物置として使われていた部屋が兄にあてがわれた。
4人と1匹でご飯を食べたリビングは、今はもう私一人の空間だ。
兄は中学2年生になった頃にはいわゆる不良となっていて、友人たちの家でたむろしてあまり帰ってこなくなった。
父は以前にも増して帰宅することが減っていった。
週に1度か2度、私の朝食用の菓子パンをたくさん買って帰ってきた。
わたしは祖母に洗濯の仕方を学び、正しい火の使い方を学んだ。
出来る限り洗濯は自分でした、父が帰ってきたときに怒られないようリビングの掃除もした、夕食も簡単なものを作って食べた。
1階には祖父母が住んでいたが、これまで母と折り合いの悪かった祖母はなんとなく、私は得意ではなかった。
それまでにぎやかだった私の家族は、そこで終わってしまった。
ただ、ただ、毎日心の端に黒い影が潜んでいる。
その影が、少しずつ私の心を、思考を、蝕んでいく。
失恋しても、いじめをされても、自分はこの物語の主人公なのだと思っていた。
最後には幸せになるのだと、揺るぎない自信があった。
これまで立っていた場所が、少しずつ崩れていく。
そしていつしか、私自身も一緒に崩れ落ちていく。
悲しさも、苦しさも、原因のわからないまま、私はただ泣いて、気が付けば自分の体を傷つけるのが癖になっていた。
心と体が乖離していく世界で、痛みを感じると気持ちが落ち着いた。
今は唯一そばにいてくれる飼い犬を抱きしめ、泣きながら眠りに落ちる日々を送った。
独白 サーモン青木 @rrre-0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。独白の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
愚痴を煮詰めたもの最新/弓納持水面
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 32話
デトックスな日々( #エッセイ )最新/麻木香豆
★33 エッセイ・ノンフィクション 連載中 75話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます