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私から見た父は、強く、立派な人間だった。
父と母は10代の頃に、母が折り合いの悪かった実母(私にとっての祖母)と距離を置き、家出をするような形で添い遂げることを決意した。
母は19歳で兄を出産した。
子供が子供を産む、なんて表現があるが、自分が19歳(20歳の年)になった時に子を産み育てられる自信があるかと聞かれたら、それは100%ない、という返答になったと思う。
父は物心ついた時には長距離トラックの運転手として朝早くから家を出て、家計を支えていた。
行き先が遠くなると1、2日帰らないこともザラにあった。
私はパパのことが大好きで、しかし部屋を汚したり兄妹喧嘩が過熱すると厳しく叱られていたので恐怖の対象でもあった。
それでも休日にはよく遊んでくれ、色々なところに私たちを連れていき、想い出をつくってくれたように思う。
小学3年生を過ぎたあたりから、父の勤める会社の経営が傾いてきたのだと、当時の両親の夫婦喧嘩を聞いて知った。
父はそのころ副社長という立場で、そこそこの給与を得ていたのではないかと思う。
経営が傾いた会社に、社長からのお願いもあり幾ばくかのお金を工面していたらしい。
我が家は父方の祖父母と同居していたということはあるが、それでも子供二人を育てるのに余裕があるわけではなかったように思う。
父と母の喧嘩は、いつもお金のことだった。
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