02:アーティファクトって嘘でしょ!?

 えーとじゃあ後は事務的に~とか前置き、金髪が話し始めた。

「選択できるジャンルは、武器・防具・衣服・装飾品・本・薬品・その他です。

 手に入るのはその系統の〝神話級ミソロジー〟の【物品アーティファクト】、つまり神話に出てくる物凄い品と言う訳です」

 金髪はわざわざ〝神話級ミソロジー〟と解説したが、これは神から受け取る【贈り物ギフト】なので言うまでも無く、すべて〝神話級ミソロジー〟なのは当たり前、何を今さらと軽く聞き流した。


「装備が被ることは?」

「二つとない品ですから決してありません。

 けど……あなたは装備なんて持ってませんよね?」

「チッよく覚えてるわね」

 過去二回で貰ったのはどちらも【特殊能力アビリティ】なので、今回貰える予定の【物品アーティファクト】とはどうやっても被り様が無かった。

「ですから先ほど絶対記憶を持っているとお伝えしましたよね?」

「一つ忠告を上げるわ。

 そこは愁いを帯びた表情で、『泣く泣く見送った旅人を忘れるはずがありません』って言う方が男ウケが良いわよ」

「なるほどなるほど、では次回からそうしてみましょう」


「ところで質問していいかしら?」

「はいっなんでしょう?」

「ジャンルを選ぶのに参考にしたいから、ジャンル別にどのくらい出払ってるのか教えて貰っていい?」

「もちろん秘密です」

 金髪はその手には乗りませんよとばかりに口角を上げてニヤリと嗤った。

「じゃあ別の質問。

 出てくる【物品アーティファクト】は地球の品・・・・だけ?」

「その通りです。わたくしは地球の神ですからね」

 えっへんと胸を張る金髪。


「んー【特殊能力アビリティ】なら迷わず【魔法抵抗】関係を取ったんだけどなぁ。【物品アーティファクト】かぁ~」

「おや何か希望があったという事ですか?」

「うん。即死がちょっとね」

 判りやすい例を出すならば【デス】の魔法。問答無用で即死を与えてくるので、非常に相性が悪い。

「即死ですか。

 でしたらいっそのこと不老不死になる【アムリタ】なんてどうですか。〝薬品〟を選択すれば行けます」

 【アムリタ】とは、飲むと不老不死になるという神薬で、隠れ飲んだ魔人がその瞬間にチャクラムで首を落とされ、不老不死の効果はなんと首だけに効いたという。

 まるで神話ヲタクの様にみえるかもだが、これは異世界召喚に巻き込まれた結果、後天的に得た知識なので悪しからず!


「絶対いらない」

「おや即答ですね」

 そりゃあそうだ。

 ここで選んだ【贈り物ギフト】は異世界から帰還後も、私に宿ったまま残る。

 向こうだけなら良かった。だけどこっちに戻っても不老不死って、その先の未来に平和的な話がどこにも見つからないじゃん!


「ところでさぁ……

 ツッコミ待ちっぽくて指摘するのが嫌だったんだけど、やっぱり聞くね。

 〝その他〟って何? 舐めてんのこれ?」

「いえいえ舐めているなんて決して。

 それはですね、ジャンル分けが出来なかった奴です。何が出るかはお楽しみですが、色々入っていてとてもお得ですよ?」

 それにしておきます? と金髪が可愛らしく小首を傾げた。

 うんあざとい。

「何が出るかお楽しみって言う奴に限ってハズレが満載なのよね~」

 そっぽを向く金髪。

 どうやら図星だったらしい。


 うう決まらない……

「う~ん〝防具〟と〝衣服〟は却下するとして……」

 ブツブツと呟いていたら、金髪が不思議そうに「どうしてですか?」と問い掛けてきた。

「だって常に着用を求められるのって辛くない?

 〝衣服〟だったらそれいつ洗うのよ」

 就寝時は脱いでいる鎧はさらに却下だ。

「でしたら決して汚れない服と言う物もありますよ」

「へぇ~凄い。

 それは他にどういう効果があるのかしら?」

「破れても瞬く間に修繕されます」

 えっへんと胸を張り、どや顔の金髪。

 続きは~としばし待ったが、それっきり金髪は何も言わなかった。

「……ねぇまさかそれだけ?」

「あら常に着用しても汚れない、まさにご希望通りではないでしょうか」

 おい……即死回避はどこ行った?


 〝防具〟と〝衣服〟はバツ。〝装飾品〟は常時着用含め持ち運びが便利そうなので悪くない。でも即死を回避する品なんてあったかな~

「悩んでますね~

 ですがそろそろわたくしの力も限界です。お早く願いますね」


「ねえ〝装飾品〟と〝その他〟どっちがいいと思う?」

「むむっ言いませんよ。ハズレを引いたらわたくしに責任を押し付けるつもりでしょうがそうはいきません」

 お前の考えはお見通しだとばかりに金髪はふふんと鼻を鳴らしながら拒絶した。

「いや、そうじゃなくてね。私は純粋に悩んでんのよ」

「じゃあ〝その他〟ですかね~」

「なんで?」

「だって〝装飾品〟って微妙なや……つ……。

 は、謀りましたね!?」

「くっく。じゃあ〝その他〟でお願いしますー」


 そして出てきたのは、

「にゃ~ん」

 足元にすりすりと耳を擦り付ける、尻尾と両前足の先端だけが黒い灰虎の子猫。

 うわぁ何コイツめっちゃ可愛いわー

 じゃなくて!!

「なにこの猫!?」

「見ての通り猫ですわ」

「これ神話級【物品アーティファクト】でしょ!? 猫っつか、なんでナマモノ入ってんのよ!?」

「えーとなになに……

 〝猫の手、 忙しいときに借りたいと思われるもの〟だそうですよ?」

「ふざっけんなぁぁぁ!!」

 こうして私は三度目の異世界の門をくぐった。

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