第8話 ベヒーモス
エメラルドアイと彼女は言いましたが、色んな呼び方があるようです。この世界では緑色の目を持つ女はよく誘拐されたりするのですが、それは緑色の目が不吉なもので、持っている子どもは悪魔が連れ去ってしまうから、だなんて迷信もあります。……これ絶対
それから
すぐに彼女は戻ってきました。そして先ほどまでは黒かった彼女の瞳が、わたくしと同じ緑色の瞳に変わっていることに、聡明なわたくしはすぐに気がつきました。
「お前ほど感応器官は強くはないが、私もエメラルドアイでね。普段はコンタクトレンズさ」
「まぁそれはそれは……。お揃いですわね?」
「もっと驚くところじゃないのか……?」
テーブルの上にグラスと氷、ウイスキーが置かれました。わたくしは飲めませんわよ?
「それで何が望みなんだ?」
「わたくしはただ魔獣の死体の
お金でもらっても困りますのよね。そろそろ我が家も怪しまれそうですし……。
以前初めてスポットに行った時に魔獣を倒して集めておいて、あとで我が家の騎士団に回収してもらおうと思ってビーコンを置いたことがありました。
そのあと近くでリュドヴィックの部隊が倒されてしまっていたせいで、なんだか国際問題になってしまっているらしいんです。不運な偶然ってあるんですわねぇ……。
「MAの製造って言っても、お前は
「スポットの中でコソコソ遊ぶくらいならいいんですけどね……。もうとっっっっってもアシが付きますのよアレ」
どれくらいアシが付くかというと、全身に表札がはりついてて「えくそしあ」って書いてあるレベルですわね。見る人が見たら即バレです。いまだバレてないのは不鮮明な映像しか残ってないからでしょう。
この世界、マギコークスとマギアスピーダ、一部の乗り物関連以外のテクノロジーレベルが1950年代くらいですものね……。
「……そのアシの付かないMAで、お前は何をする気なんだ?」
「自衛と復讐……でしょうか?」
「復讐? 復讐は何も生まないぞ」
「復讐は気持ちいいからするんですのよ? 生むとか生まないとか、連鎖とかどうでもいいんです」
「……だが、いまいち信用できんな」
「
「なぜ知っているんだ!? そういうところが信用できないって言ってるんだよ!」
あとわたくしにはずっと聞きたいことがありました。ゲーム内では
よくありますわよね。クリア後にえっちな衣装が増えたりするやつ! あれですあれ! どこにいるんでしょうか……?
◇────────────────◇
『ベヒーモス』と呼ばれる大型魔獣、それが翠蘭に指定されたターゲットでした。アペルピシア山脈の麓に生息し、岩のような固い殻に覆われている大型魔獣だそうですわ。
個体差もありますが全長は40メートルオーバーは当たり前で、動きは遅いですが恐ろしくパワーがあり、スポットを囲んでいる壁も簡単に突破することから、とても恐れられている……のだそうです。
話を聞いた感じですと、おバカデカくて脚が多い、トカゲと亀とイノシシを足して3で割った感じでしょうか……? ゲームにそんなの居ましたっけ?
退治する際は実弾兵器が通用しないため、エネルギー兵器と呼ばれる
わたくしの記憶にまったく思い当たらなかったので困っていたのですが、いざ実際に見てみると、「あぁ〜! こいつのことでしたのね!」と思わず声が出てしまいました。
ターゲットはデカいカニでした。ゲームにも居ました、居ました! 殻を熱したら赤くなるギミックありましたわね! 懐かしいですわ。
ちょうどいいところに運搬担当として着いて来ていたおじ様たちが居ます。解体用のナイフを借りることにしましょう。
ああこの前、指を折ってしまったおじ様とも仲直りしておきました。ご安心ですわ。
わたくしはグローシアで飛び上がり、背面のバーニアを吹かしながらベヒーモスの脚の付け根を狙います。
わたくし、やるんです! 今ここで! 冬の日本海で培った技術が生かされる時が来ましたわね……!
関節のつなぎ目にナイフを入れて、こうして……こう! ほら、脚が取れましたわー! ってやってましたら、後ろでおじ様たちがドン引きしてました。旬のカニはとてもおいしいんですのに……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。