第7話 主任

「悪魔! 来てやったぞ!」


 キュラキュラと2メートルほどの角ばった造形の人型の戦車に乗った女がこちらに進んできます。手持った拡声器を使い、こちらに話しかけてきました。うるせぇですわね!?


 その女は身長が高く、長い赤い髪をポニーテールにしています。不満そうにキセルを咥えながら、人型タンクの頭の上に置いた灰皿にキセルの吸い殻を捨てながらキレていました。


 この夜会に行くようなドレスに白衣姿の変な格好な女が「主任」なのでしょうか? 原作だと立ち絵しかありませんでしたけど、確かチャイナドレスを着ていたような気が致しますわね……?


「ごきげんよう。あなたが主任さん? 何か想像と違うのですけど……」


「ああそうだ、悪魔。何の想像かは知らないが、早速そのMA見せてもらってもいいか?」


「構いませんけれど、攻撃しないでくださいね? わたくしここの人たちは殺したくありませんから」


「わかった。各員攻撃はしないように」


 グローシアを跪かせ、ハッチを開き、その前に手を置いて乗りやすいようにします。するとタンクマンに乗った主任がキュラキュラと足元までやってきました。


「ほ、本当に女なのか!?」


「声でわかるでしょうに……」


「この世にはボイスチェンジャーで油断させてから攻撃してくる輩も居るからな」


「えぇ……新手の妖怪ですの?」 


 わたくしはコクピットから飛び出し、主任の前に降ります。目の前にはわたくしより身長が高くて、わたくしより少しスタイルがよくて、わたくしといい勝負のお顔をしている女が立っていました。……主任は強い……まだ勝てないですわ……。 わたくしは伸び代の化身ですから問題ありませんけどね!


「なんだ? お前、目が見えないのか?」 


「いえ、見えてますわよ。お気遣いなく」


 怪訝な顔をしながら、目を閉じたまま見ているわたくしの顔をじっと見ている主任。不思議そうに首をかしげながらタンクマンの背中から降りますと、わたくしと入れ替わるようにグローシアのコクピットへと向かいます。


「全然見て頂いて結構なのですけれど、ビックリしないでくださいね? わたくし言いましたからね?」


「シュニン、危険デス。シュニン、危険デス」


 キャタピラタンクマンの肩の赤いパトランプがクルクルと回り、機械音声が警告を繰り返します。


「私はもう驚いている! ピュアマギコークスクリスタルが4本だと……!? これは新型ではなく、第1世代機か!?」


 フラフラとハイヒールのままグローシアの手に登ると、主任はコックピットに乗り込み、ハッチを閉じました。


「そういう意味ではないのですけれど……」


「シュニン、危険デス」


『キャアァァァァーーー!!!』


 事件性のある可愛らしい悲鳴ですこと……。


「シュニン、言ッタノニ……」


「わたくしも言いましたわよ?」


「お前! 主任に何をした!」


 倒れていた夜月のMAのハッチが開き、中からパイロットが発砲してきました。拳銃って言いますの? 小さめの銃のようですわね。わたくしそういうの詳しくないので……。


 わたくしはタンクマンの後ろに隠れると、抗議の声をあげます。


「ちょっとタンクマン! わたくし何もしてないのに撃たれてますわよ!」


「タンクマン? ワタシノ名前ハ『ポインター』デス! 研究員スミス、タダチニ発砲ヲヤメナサイ。命令違反デス」


「うるせぇポンコツ!」


『キャアァァァッ! 出してぇぇぇぇ!』


 二度目の悲鳴と情けなくも可愛らしい主任の声が格納庫に響く中、ついでのように発砲音も響きます。わたくしは目を開くと感応器官を働かせ、発砲しているスミス氏の姿を捉えます。


「ポインターさん。あれって制圧してもいいですか?」


「命令違反者ハ警備担当ガ取リ押サエナケレバイケナイハズナノニ……。アナタガ取リ押サエテモ問題ハアリマセン」


「いいんですの? でしたら……えい!」


「ガァッ!」


 この力、結局何なんでしょうね? サイコキネシスって言いますの?


 物を引き寄せたり、動かしたりできて便利なのですけれど、一番強い力を発生させると指くらいなら折れるんですのよね。


 ポキポキしていると、ついにおじ様のうめき声しか上げなくなってしまいました。そこでようやくグローシアのハッチが開き、中から裸足の主任が転がり出てきました。


「で、出たのよ! キャッ……」


 そしてなぜかそのまま転がり落ちてきた主任さんを、わたくしがお姫様抱っこで救う形になりました。ここでもこの超能力っぽいものが活躍しましたわね! でないと12歳のか弱い少女がこんなこと出来るはずありませんもの!


「ええと……あれはわたくしのひいひいひいひいひい……くらいのおばあ様ですわよ」


「……もしかして、お前エメラルドアイなのか?」


 わたくしの目をじっと見つめる翠蘭。お代としてケツは揉んでおきましょう。

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