第2話 新たな興味

文化祭が終わり、日常に戻った蓮の生活。しかし、彼の心には新たな変化が芽生えていた。毎日、学校へ行く前に、ベッドサイドに置かれた小さな猫のぬいぐるみを手に取り、その柔らかさと愛らしさを感じるのが日課となっていた。


ある日の放課後、蓮はインターネットで「手作りぬいぐるみ」の作り方を調べ始めた。彼は手先が不器用で、今まで何かを作ることには興味がなかったが、萌が作ったぬいぐるみを見て、その気持ちが変わったのだ。


「自分でも作れるだろうか…」蓮は少し不安を感じつつも、チャレンジすることに決めた。材料を買いに手芸店へ行き、フェルトや綿、針や糸を揃える。そして、家に帰ると早速作業を始めた。


初めての試みは簡単ではなかった。針に糸を通すだけでも苦労し、フェルトを切るのもまっすぐにできなかった。しかし、蓮は諦めずに作業を続けた。何度も手を刺して痛みを感じながらも、その度に萌の微笑む顔を思い出し、頑張ることができた。


数日後、蓮はついに自分の初めてのぬいぐるみを完成させた。それは、形は少しいびつだったが、彼自身が作ったものとしては十分だった。出来上がった猫のぬいぐるみを手に取り、満足感と達成感を感じた。


「これが、僕の最初の作品か…」


蓮はそのぬいぐるみを見つめながら、自分の心がどんどん変わっていくのを感じた。自分でものを作る喜びを初めて知った瞬間だった。


その日の夜、蓮は妹の菜々(なな)に自分の作ったぬいぐるみを見せた。菜々は驚きながらも、兄の手作り作品を褒めてくれた。


「お兄ちゃん、すごいね!これ、自分で作ったの?」


「うん。初めてだから、まだまだだけどね。でも、楽しかったよ。」


「私もぬいぐるみ作ってみたいな。教えてくれる?」


蓮は妹の言葉に嬉しさを感じた。妹と一緒に何かを作ることができるなんて、今まで考えたこともなかった。彼は妹と一緒に次の作品を作ることを約束した。


こうして、蓮の新たな日常が始まった。学校の勉強も手につかないほどではないが、放課後には手芸店に通い、様々な材料を買い集めることが日課となった。インターネットで作り方を調べ、試行錯誤を重ねる日々。妹との共同作業も楽しく、新たな絆が生まれていた。


蓮の「カワイイモノ」への興味はますます深まり、自分でももっと上手に作りたいという気持ちが強くなっていった。彼はまだ知らない。この小さな変化が、彼の未来にどんな大きな影響を与えるのかを。しかし、確実に彼の世界は色づき始めていた。

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