第五話

「ママ、願い事!」


誰が教えたわけでもないのに、5歳になる若葉わかばがはしゃいだ。


母と病室で過ごした頃の私と同じだな、と昔の自分を重ねた。


この歳になって、自分では叶えられないことを願ってしまう自分に気付いた。


(若葉がいつまでも元気で幸せでありますように――)




私も母と同じ病気で、入退院を繰り返すようになっていた。




母の目には、こんな風に私が映っていたのだろうか。


あと何回、こうして誕生日ケーキのろうそくを吹き消すことができるのだろうか。


吹き消した後の煙の匂いの中で、誕生日の願いとは別に自分に誓った。


願いを叶えるのは自分――。

いつかその事に気付いた若葉が、願いを叶えていける強さを、知恵を、そして叶わなかったときも前を向いて生きていけるように愛を、私が与えていこう。


僕もいるよ、という目で黙って私を見ている久人に微笑み頷いた。

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