第五話
「ママ、願い事!」
誰が教えたわけでもないのに、5歳になる
母と病室で過ごした頃の私と同じだな、と昔の自分を重ねた。
この歳になって、自分では叶えられないことを願ってしまう自分に気付いた。
(若葉がいつまでも元気で幸せでありますように――)
私も母と同じ病気で、入退院を繰り返すようになっていた。
母の目には、こんな風に私が映っていたのだろうか。
あと何回、こうして誕生日ケーキのろうそくを吹き消すことができるのだろうか。
吹き消した後の煙の匂いの中で、誕生日の願いとは別に自分に誓った。
願いを叶えるのは自分――。
いつかその事に気付いた若葉が、願いを叶えていける強さと知恵を持っていられるように。
そして叶わなかったときも前を向いて生きていけるように。
そのための愛を、私ができるだけ与えていこう。
僕もいるよ、という目で黙って私を見ている久人に微笑み、頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます