第四話
それからの私は、時々願い掛けをするようになった。
その願いは、自分自身へと掛ける願い。
”願いは誰かが叶えてくれるものじゃない”、そう言った、久人の言葉を何度も思い出していた。
母の病が治るようにと、ただ祈っていただけの私。
新しい治療法や、薬などの知識も学んで、今の私ならできることはたくさんある。
幼い私には無理なことだったとしても、もっと何か自分なりに動いていれば、私の中の後悔は別の形に変わっていたかもしれない。
そう思うようになった。
二人で迎える三度目の私の誕生日に、真面目顔の久人が言った。
「君の願いは、僕ができるだけ叶えていく。」
”全て”と言わないところが、久人らしくて嬉しくなった。
私は笑ってそのプロポーズを受け入れ、ケーキの上で揺れる自分の心を真っすぐに見つめながら、長い息で火を吹き消した。
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