第三話

「葉子、さ、願い事して。」


付き合い始めて約三か月の久人ひさとが言った。


私は首を振り、願い事はしないの、と母のことを含めて、自分の気持ちを正直に話した。


久人は最後まで黙って聞いた後で、言葉を選びながら、こう言った。


「多くの願い事は、何の努力もなく誰かが叶えてくれるものではないんだよ。」


久人は真っすぐな目で自分の考えを教えてくれた。


「僕が思うに、たぶんそれは、その時の自分の心の拠り所よりどころを再確認する、って作業なんじゃないかな。」


「節目の振返り的な儀式?」


「そう。…と、僕は思う。」


二人で笑った。


私はろうそくを吹き消した。


来年もこの誠実な人と、一緒に過ごせる自分でいよう、と心に決めた。

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