第二話
「葉子、お誕生日おめでとう。」
友人たちが囲むテーブルの中央に、ろうそくの揺れるホールケーキがある。
その言葉と同じ内容のメッセージプレートが添えられている、二十歳になった私の誕生日ケーキだ。
「ほら葉子、願い事を掛けながら、ろうそくを吹き消して。」
共に同じ青春期を過ごしている友人たちの、悪意のない言葉。
でも私は知っている。
願いなんて叶わないということを。
どんなに願い続けていても、自分には関係のないところで叶わないと、最初から決まっているものだということを。
だから私は、あの日以来、誕生日ケーキへの願いは掛けなくなった。
誕生日だけでなく、七夕や神社でも願いを掛けることはなくなっていた。
「ありがとう。」
そう言いながら、笑ってろうそくを吹き消す。
ろうそくに込めるべきは、願いではなく、”祝ってくれる人がいる”ということへの感謝だ。
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