日常2
我が家の触手の塊こと赤崎玖音ちゃん。
見た目は完全にSAN値チェックが必要な異形っていうかクリーチャーっていうか生物兵器っいうか、バイオ八ザー〇に出演したポケモ〇のモンジャ〇の様な見た目である。
「玖音ちゃんっていろいろと体の形を変えられるよね?」
「そうね。やってみたら意外と変えられたわ」
「おごっおごっ(そう言いつつ口から体内に侵入しようとしないで?)」
「誰かの温もりに包まれてると安心するの……入っちゃダメ?」
「おごっ!(いいよ!)」
触手ちゃんは人の温もりに飢えており、俺の体内をよく寝所にしたりする。触手ちゃんはツンツンヌルヌルしているところはあるけど本当は優しい子なので俺の内蔵を傷つけるようなことは決してしない。なんて良い子なのっ。涙ちょちょぎれる。
こうして触手ちゃんとは頻繁に合体を繰り返している。寄生されてる言ってもいい。
あと合体することで触手ちゃんと感覚を共有することが出来たりもする。
「おごごっ!」
「ギャーーーーッ!?口から触手が飛び出してますっ!?気持ち悪ッ!やめてください!悪気があった訳では無いんです!夏の暑さのせいです!だから、許しーーひぃっ!?しょ、触手が絡みついてきてッ……!あっ、そ、そこはダメです……!や、やめてくださッーーンヒィッ……!」
と、まあ。このように俺の意思でも触手ちゃんの触手を口から出して自由自在に操ることが出来る。触手プレイがヤリたい放題。
天使ちゃんに触手は基本として、女騎士感ある赤鬼ちゃんにはとても映えるし、クソ生意気な雪女ババアを分からせるのにも使える。主に雪女ババアに対して使うことが1番多かったりする。
「これに懲りたら二度とこんなことしないでね?」
「はひっ……」
暑いからと冷蔵庫を開けっ放しにして中に頭を突っ込んで寝落ちした挙句、冷蔵庫の中の食材を全滅させた1級糞馬鹿戦犯の穀潰しヒキニート雪女ババア。お灸を据えるのにぬちゃぬちゃぐちゃぐちゃした時には大きく活躍した。触手って便利。
「買い物してくる」
「一緒にイク」
「随伴希望」
頭に怨霊ちゃん人形を乗せて、メタルメイドを引き連れつつ買い物に出かける。
「いってらっしゃい」
にゅるにゅると触手を振って見送る触手ちゃんの声は何処か寂しげだ。
見た目が見た目なだけに基本的に触手ちゃんはいつも留守番をしている。ボケカスババアが常に自宅警備員として在住しているので家に1人という訳では無いが、触手ちゃんも一緒にお出かけとかしたいと思ってるのだろう。何とかしてあげたさはある。
「思ったんだけどさ」
「何かしら?」
「なんか人型のガワがあれば、それを被って普通に出歩けたりするのでは?」
「あっ、それ。ワンチャンありそうね」
と、言うわけで。
俺は単身、赤崎玖音が人体実験されていた研究所に乗り込んでみた。
研究所のデータベースを漁ってみると改造前の赤崎玖音の身体構造データが残っていた。ラッキー。
そのデータを元に人工皮膚で玖音ちゃんのガワを作らせて我が家に持ち帰る。
「玖音ちゃん、コレあげる」
「なにこれ、皮?」
「着る?被る?入る?何んしても、どうぞどうぞ」
「んー。あっ……何か懐かしい感じがするわね」
爆誕。赤崎玖音のガワin触手ちゃん。
「どうかしら?」
「おっ……おお……?」
関節ーーどころか人なら曲がっては行けないところまで曲がってる。全身ぐねぐねしておる。骨が無いみたい。いや実際無いんだけど。
「案外、人の形をとるのって難しいわね。っていうか意外と疲れるわ」
「思いのほか微妙?」
「う、うん……ちょっと微妙かも」
鏡を持ってきて自分の姿を確認しながら、人っぽくなるように形をとってもらう。
「どうかしら?」
「体の穴という穴から触手が飛び出してるね。引っ込めてみよう」
目と鼻と口と耳から触手が飛び出し、自立はしてるが足2本にアソコと後ろから飛び出している触手で4足歩行していた。サイコホラーFPSのモブエネミーですね。分かります。
「要練習だね」
「そうね」
要練習である。慣れてくればそのうち人のガワを被って出歩けるようになることだろう。これで触手ちゃんとお外デート出来るね。やったぜ!
「やっぱり、玖音ちゃんは人間に戻りたい?」
「戻れるなら戻りたいーーけど、最近はあんまり気にしなくなってきたわ。この体、結構便利だし?それに……」
「それに?」
「アンタは……どんな姿でも……。その……私の事…………す、好き…………でしょ?」
「大好き。超愛してる」
というか。まあ。俺としては人間じゃない方が好きだったりするが、それはそれ。
どんな姿でも触手ちゃんーー赤崎玖音という存在がちゃんと好きだ。
あと玖音ちゃんだけじゃなくてみんな好き。
「だから、別に、それでいいかなって、ね?」
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