木
【おしらせ】
前回おまけを前々回に移動。前回におまけ追加しました
木。
クソ田舎にある我が家。
縁側に座って外の景色を眺めてみると、そこに広がってるのは手入れのされていない田んぼと畑とあぜ道。その先には山々が見える。なんとも田舎らしく田舎らしい風景だ。
その見える山々の中にひとつーー山の数え方ってひとつふたつでよかった?まあ、伝わればなんでもいいかーーだけ山頂が禿げ上がった山があった。
殆どがうっそうと生い茂る木々で緑色なのだが、その山の山頂だけが森林伐採故なのか、むき出しの地面の色になっていた。
その山は俺がここで暮らし始めた時には既に禿げ上がっていたので、俺はその山をハゲ山などと勝手に命名して呼んでいる。
今更感はあるが、そのハゲ山の山頂をよくよく見てみると、そこにはポツンと1本だけ木が生えているような、生えていないような気がしないでもない。
「じいちゃん。あのハゲ山ってなんでアレだけ禿げ上がってんの?」
「アレか。なんでじゃろうな。ワシも知らん」
近所(徒歩十分)に住んでる爺に聞いてみたが、爺も知らんらしい。
「あー、そういえばワシの曽祖父がなんか言っとった気がするのお。なんじゃたっかな。とりあえず近づいてはならんと言っとったような」
「へえ。なんか、いわく付き?」
「知らん。忘れてしもうた」
爺はボケて忘れとるようだ。
しかし、近づいてはダメと言うのだから、まあ、いわく付きかなんかなんだろうとは推察出来る。
気になったのでハゲ山の山頂に登ってみることにした。
と。言うわけで、ハゲ山の山頂に着いた。
酷い有様だった。そこには荒れ果てた風景が広がっている。雑草の1本も見当たらず、地面は乾ききってひび割れている。生き物の気配もまるでない。虫の1匹もいない。
その荒れ果てた地面の中央。丁度、山頂部分であろう所にポツンと寂しく木が1本だけ立っていた。
その木の様子も酷いもので、葉っぱ1枚ついてない。殆ど枯れかけていて腐ってボロボロだ。強めに蹴り飛ばせば折れて倒れそうな程である。
かろうじて立っているだけ、そんな印象を受ける。
その木に近づいてみると、木は何かでぐるぐる巻きにされているのが分かった。
これはーーしめ縄?
かなりの年数が経過してるのか、かろうじて縄だと判断出来る程度のボロボロ具合。今にも途切れてしまいそう。
見るからに何かの封印を施されているような感じはある。
一旦、そのしめ縄を引きちぎってみた。しめ縄は脆く、あまり力を入れずとも手で簡単にちぎれた。
何が起こるかな?とワクワク気分ではあったが、しめ縄をちぎって見ても特に何も起こらない。
しばらく待つ。
しかし、何も起こらない。
既に朽ちていたーーという事か。
無駄足だったかー。非常に残念である。新たな出会いがあるような気がしたのに。
帰ろうと朽ちた木に背を向けて帰路に着こうとしたーーその時。
「まって」
背後から声を掛けられた。
振り返る。
「たすけて」
枯れた木の根元に一糸まとわぬ裸の少女が居た。
少女は目を閉じ木の幹に背を預けて横たわっている。
酷くヤツれてガリガリに痩せ細った少女だ。
「おねがい」
今にも事切れてしまいそうな消え入る声で少女は呟く。
実際、俺がなにか返答を返す間もなく、少女はその呟きを最後に消えてしまった。
あとには物言わぬ枯れた木が取り残されているだけ。
どうしたもんか。
女の子だというのなら持って帰りたいところではあるが、おそらくさっきの少女の本体はこの枯れた木なのだろう。
デカイな。ぽーちゃん様よりデカイ。3メーターぐらいだろうか。
流石に木だし。これを引っこ抜いて持ち帰るのは俺1人では割と厳しい。
「ぽーちゃん様、居る?」
「ぽぽぽ」
気がつくとすぐ隣にデカイ女が居た。都市伝説系女子のぽーちゃん様である。神出鬼没なのはこういう時に便利。
「この木を持って帰りたいから、みんな連れてきて?」
気がつくとデカイ女は消えていた。
意思は伝えたので、暫く待っていればみんなを連れてきてくれると思う。あとは力技でなんとかなるだろう。
そうして俺はみんなの人外パワーを有効活用し、枯れた木を無理矢理引っこ抜いて自宅に持って帰った。
◇
ーー名前は?
…………。
ーー歳いくつ?
…………。
ーーあんな所で何してたの?
…………。
ーー男性経験ある?
…………。
ーー恋人は居る?
…………。
ーーこいうのに興味あった?
…………。
ーー黙ってても帰してあげないよ?
…………。
ーーそれじゃ。そろそろ初めよっか。
…………。
◇
我が家の庭に朽ちかけの木が立った。
それから数日。木には毎日欠かさず水をかけている。液体をぶっかけていると言ってもいい。
「うーん。最近なんだか身体がダルくてね。なにか生命エネルギーを吸い取られてる気がするんだが……」
おかしいなあ。と、呟くのは天使のシアリース。
それはシアリース呑みならず俺や他の子達も同様の異変を感じていた。
十中八九、庭に植えた木が原因だろう。
まあ、暫くしたら木とも意思疎通が出来るようになるだろう。その時が来たら改めてしっかり調教してやろうと思ってる。
〜おまけ〜
「私は雪女の雪華と申します」
「ボクは天使のシアリース!」
(以下略)
「ところでコチラにエアコンは無いのですか?」
「エアコンなんて無いわよ。扇風機で我慢なさい」
「そんな殺生なッ!この糞暑い夏をエアコン無しで乗り切れと!?私、雪女ですよ!?解けて無くなってしまいますッ!直ぐに業者を呼んでください!エアコン!エアコン!」
「…………うるサい」
「ひゃわっ!?な、ななな、なんですか、今の!?背筋が凍りつくような悪寒を感じたんですが!?」
「騒音問題。原因排除」
「ひぃやぁあああっ!?!!うわなにするやめくぁw背drftgyふじこlp;@:「」!!!」
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