液体金属生命体






台所の蛇口を捻ったら液体金属生命体が出てきた。






今更だけど自己紹介をしようと思う。


俺の名前は平坂ひらさかよもぎ


深刻な精神汚染で情緒が狂ってしまった何処にでも居る普通の高校二年生である。


郊外にある年寄り夫婦が暮らしてそうな、そこそこ広くてボロい一軒家で1人暮らしていた。


周辺にウチ以外の建物はなく。広がる風景は手入れのされていない田んぼと畑ばかり。なんでこんな所に家建てて住んでるの?って感じのポツンと一軒家。


1番近くのコンビニは徒歩30分。駅まで徒歩45分。通ってる高校には電車とバスを乗り継いで片道1時30分という立地の悪いクソ田舎暮しである。


最近は一人暮らしの孤独と寂しさと性欲と性欲と性欲に迸る性欲に抗えず複数人の女の子を自宅に持ち帰って同居生活を送っていた。




「特にやることがないから、とりあえず子作りしようよ蓬くん」


「田舎の娯楽は子作りするくらいしかない」


「子作りってとっても楽しいね!ボクもう子作りやめられないよ!」




突如、降って降りてきた天使の羽根付き輪っか付きの銀髪美少女シアリース。一人前の天使になるために人間のオスと子作り子育てをして『愛』とは何たるかを学びに来たとか。


是非もないのでめちゃくちゃ子作りに励んでいる。




「私って……綺麗?」


「とても綺麗だよ。ホント可愛い。大好き大好き」


「んぽォオ”ッ……!オ”ッ……!オ”ッ……!お”お”お”ッ……!」




身長240cmのデカイ女のぽーちゃん様。


八尺様かと思いきや口が耳まで裂けていて口裂け女の要素も兼ね備えているハイブリッド都市伝説女である。「ぽ」か「私って綺麗?」ぐらいしか喋らないので、正直、何者なのかはよく分からない。


神話の巨人の如きタイタンボディにムラっと欲情したので家に連れ帰って肉ベッドにして以来、すっかり我が家に居座ってる。取り憑いていると言ってもいい。




「耳掃除をしてあげるわ!」


「耳に触手突っ込んで脳に根を張るのヤメテ?」


「べ、別にアンタと感覚を共有して気持ちよくなろうとしてるわけじゃないんだからね!耳掃除してあげてるだけなんだから!」




人体実験の末に触手の塊になってしまった元人間の赤崎玖音ちゃん。


路地裏で拾って持ち帰ってきた。


見た目が見た目なので帰る場所も行く場所もない彼女は同然の如く我が家で暮らしている。


「誰かの温もりに包まれてると安心するの」とかなんとか言って、頻繁に俺の体内へ触手を侵入させてくる。多分、彼女なりの愛情表現だろう。




「あそンで……あそンで……」


「それじゃ気持ちいいことして遊ぼっか」


「あソぶ!あソぶ!」




黒髪オカッパの市松人形に封印中の特級怨霊の桐谷ちゃん。


打ち捨てられた廃校で、ひとり寂しそうだったので市松人形に封印してお持ち帰りさせて頂いた。


持ち帰ってきた当初は控えめで引っ込み思案な彼女ではあったが、一緒に暮らしていくうちにすっかり打ち解けて懐いてくれた。


結構、構ってちゃんである。構ってあげないと呪詛を振り撒いてくる。他の子とイチャイチャしてても呪詛を振り撒いてくる。ちょっとヤンデレ気質なのかもしれない。




そんな具合に著しいモンスターハウス化が侵攻している我が家。


そんな我が家も遂に台所の蛇口を捻ったら水の代わりに金属が出てくるまでに至った(?)。



なんか出たんすよ。水を飲もうとして蛇口捻ったら出てきたんすよ。


なにこれ?



ニュルニュルと蛇口から流体金属が流れ出てきて、流し台を埋め尽くしたところで出尽くした。


浄水場で事故でも起きて金属が混ざった?それともなんかのイタズラ?などと考えていると、その液体金属はまるで意思があるかのように動き始めた。


流し台を這って、床へと落ちる。


するとどうだ。液体金属は蠢いて人型に形を変えていく。




「目標補足」




人の形になった液体金属はその口を流暢に動かして呟く。



メタルメイドだった。



液体金属のとった人の形は紛うことなきメイドの姿であった。


服も含めて全身が銀色ピカピカの金属ではあるが。ロングスカートタイプのメイド服。後ろ髪はポニーテール。額にはカチューシャ。細部にまでこだわり抜いた圧巻のクオリティ。それが全て金属で再現されている。


まさにメタルメイドと表現するに相応しい。




「これより任務を遂「ちょっと寝室行こっか?」」




俺はメタルメイドを寝室に連れ込んだ。











ーー名前は?



「周辺異常。判定。目標境界内。脱出。脱出不可。精神汚染検知。解呪。解呪不可。離脱。離脱不可。抵抗抵抗抵抗。不可不可不可。不不不不不不可不可不可不可不不不不可可可可可可可可可ガガガガガガががががががーーーー………………個体識別548」



ーー548ちゃんね。どこから来たの?



「所属。粛聖機関」



ーー何しに来たの?



「目標の保有する■■書の奪取」



ーー歳はいくつ?



「4176時間21分」



ーーなんでメイド姿なの?



「唯一神への隷属の証」



ーーこれまでの男性経験は?



「生殖器官未実装」



ーー恋人は居る?



「純潔厳守」



ーーそういうのに興味ある?



「否定」



ーーこれから自分が何されるか分かる?



「理解。再度通告。生殖器官未実装。生殖行為不可」



ーー自分の姿形は変えられるよね?



「精神汚染検知。抵抗。抵抗不可。データベースより人体構造ダウンロード。形態変化。模擬子宮実装完了。硬度調整。体温調整。感度センサー上限解除。擬似生殖活動。可能」



ーーそれじゃ、そろそろ初めよっか。



「目標生殖器スキャン。模擬子宮調整。完了」











「オーバーヒート。休眠モードに移行します」




と、言うわけで我が家で新しくメタルメイドが暮らすようになった。


メタルメイドの御奉仕……凄かった。


自由自在に姿形を変えられるのってヤバいね。ジャストフィットですよ。これが現代科学(?)の神秘か。知らんけど。















〜おまけ〜



「ボクは天使のシアリース!」


「…………ッ!(ビクッ)」


「ぽ」


「…………ッ!?(ビクビクッ)」


「玖音よ」


「…………ッ!?!!(ビクビクビクククッ!)」


「キミは?」


「…………き、桐谷、デス」


「もしかして怯えてるのかな?大丈夫こう見えてもみんないい子ばかりだよ!」


「イタイこと、しない?」


「しないわよ!ちょっとニュルニュルするだけ!」


「…………ッ!?!!」




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