特級怨霊




現在、人間と蜘蛛を足して×3した感じの怨霊に追いかけ回されてます。



SNSで話題に上がっていた心霊スポットの廃校。


山の上ににある元県立高等学校。そもそも立地が悪くあまり人気がなかった上に、イジメによる飛び降り自殺なんて事件が起きた。そこからさらに在校生徒の不審死が相次いで閉鎖となったシンプルいわく付きの場所である。


取り壊そうと解体業者が入るも、原因不明の事故が連発。死者も出て、こんなんやってられへんわ!帰らせてもらいますぅ!と何処の業者も完全拒否。


そんなんで取り壊すにも取り壊せず現在に至るまで放置され、ヤバめの心霊スポットに仕上がった。



それで最近、心霊スポット探索系配信者がフォロワー稼ぎのためにこの廃校でライブ配信をしてたんだけど、案の定、事件は起きた。


配信者が探索するも特に何も無く「なんも出ねえw噂だけかよwww」と草を生やした。


その次の瞬間ーー配信画面に亀裂が入る。



乱れる画面。

配信者の悲鳴。

ブチブチと無理やり肉を引きちぎってる様な音。



最後に画面は赤く染まりシグナルロスト。


ライブ配信は終了した。


配信アーカイブは残らなかったが切り抜き動画が拡散されてバズった。


さらに、後日。配信者は行方不明になってることが分かり真実味を帯びて一大ムーブメント。ネットニュースになったり、SNSではその廃校に関するワードがトレンドを独占したり、テレビのニュース番組で取り上げられたり等々。



んで、俺は野次馬根性丸出しで廃校を訪れた。




「コロシテ……コロシテ……」




そして、出くわしてしまった。


前髪パッツン黒髪ロングストレートにボロボロのセーラー服。肌は青く生気は全く無い。黒く窪んだ瞳はまるで奈落の底に繋がってるようで、そこから血の涙がとめどなく流れ出ていた。


パッと見、ひと目でわかるほどにその少女は怨霊だとか悪霊だとか地縛霊だとか、そんな類の存在である。




「コロシテ……コロシテ……」


「キミもう死んでない?」


「コロシテ……コロシテ……」


「うーむ。話しが通じないタイプか。どうしたもんかね」


「コロシテ……コ、コロシ、コロシテ、コココロロ、ロロロロローーーコロ、コロ、コロ…………」


「……お?」


「殺シテヤルッッッ!!!」




その怒声を皮切りに怨霊少女の背中を突き破り無数の腕が生えた。


さらにゴキゴキと音を立てて胴体が有り得ない方向にネジれながら伸びる。


180度に捻れた胴体。胸は上を向き、背中は下を向き、背中から生えた無数の手が地面をタッチ。なるほどトランスフォーム。それが戦闘形態ってわけね。


こいつはアレだ。かなり大量の霊を取り込んで肥大化してるね。怨みパワー全開でとっても濃密な呪詛を垂れ流してますよ。もはや特級怨霊って感じ。




「コロシテヤル……ーーコロシテャラリィイイイイヤァアアアアアキイイイイィィィイイイイイアアアァァァァアッッッッッッ!!!!!」




怨霊はーー動き出した。



悲鳴のような絶叫を上げ、捻れて伸びた胴体を反らした状態で、無数の腕を使いーー床を、壁を、天井を、デタラメに這い回りながら、猛然と俺目掛けて突撃してくる。アレだね。某ホラー映画のブリッジダッシュみたいだね。


両手を広げて受け止めてあげようか?いや、流石に無理かあ。一旦、逃げよう。はい、回れ右。



回想終了。現在に戻る。



あー、クソッ……。



怨霊の顔面は逆さま。胴体は胸を上向きに反り返っている。変異した事によって怨霊が着ていたセーラー服は内側からぶち破れたのだが……。


ボロボロのセーラー服が身体にまだ残っててギリギリおっぱいが隠れてやがる……!


お風呂シーンでの湯気が如く。ブルーレイ版で消える謎の光が如く。ホント邪魔。生のおっぱいちゃんと見せろやボケカスが。



その事に憤慨しながらも怨霊に追い掛け回されて俺は廃校の廊下を走りまわる。



こうして追ってくるのならば、このまま家に帰って部屋に連れ込んでやろうかと考えるも、残念ながら廃校から出られなくなっていた。


ホラー映画定番の奴ね。1度入ったら2度と出られなくなるアレ。扉は鍵が掛かってないのに開かないし、謎の力で窓は叩き割れずビクともしない。怨霊の呪詛で廃校全体が異界化してるとか、そんな所だろう。多分。


つまり、この廃校は今、(ピー)しないと出られない廃校になってるってワケだ(?)。とっても興奮するね。



手詰まりーーと、言う訳では無い。



怨霊ちゃんから逃げ回ってる訳だが、何も俺は闇雲に逃げ回ってる訳じゃない。ある目的地に向けて俺は逃げてるーー否、怨霊ちゃんを誘導していた。



目指す場所、それはーー保健室。



そりゃね。



学校で女の子を連れ込むつったら保健室に決まってるよなあッ?


保健室に連れ込んでナニするに決まってるよなああアッッッ???



怨霊とは言え女の子。霊とはいえバリバリ物理干渉してるし。触ることが出来るだろう。それならヤってヤレないことは無い。


いや、分かる。他にも選択肢はあると思うよ?体育倉庫とか屋上とか空き教室とか理科準備室とか生徒指導室なんてのも悪くないけど……やっぱり大定番は保健室に決まってるよね。



そんなわけで俺は保健室に怨霊ちゃんを連れ込んだ。











ーー名前は?



「キィイイイイイイイイイイイヤァァァァアアアアッッッッッッ!?!!!!!!」



ーー桐谷ちゃんね。どこから来たの?



「コロシテヤルッ……!コロシテヤルッ……!」



ーー歳いくつ?



「オ、オマ、オマ、オオオオマ、エラガ、オマエラガッ……!」



ーーここで何してたの?



「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス」



ーーはいはい。暴れないでね。



「お"お"お"ッッッ……!?!!ヤメテ……ヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテ……ヤメテ、ヤメテクダ、ヤメテクダサイ……オネガイオネガイオネガイオネガイシマス……ヤメテクダサイ、オネガイシマス、ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」



ーーあー、ごめんごめん。別に乱暴しようって訳じゃないから。大丈夫。なんにも怖くないよー。



「アッ……あ、アッ、アッ……アアアッ……」



ーー落ち着いた?



「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……………………………………………………………………………………………………ワタシ、ワタシ……ワルクナイ、ワタシハ、ワルクナイ、ミンナ、ナンデ、ワタシ、ヒドイコト、ヒドイコト、スルノ?イタイ、イタイヨ、イタイイタイイタイイタイイタイイタイ、ヤメテ、ヤメテクダサイ、タスケテ、オネガイ、ヤメテ、タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ」



ーー男性経験ある?



「……ワカラナイ……ワカラナイ」



ーー恋人は居た?



「ミンナ、ミンナ、ミンナミンナミンナキライキライキライキライキライキライキライキライ」



ーーこういうのに興味あった?



「シラナイシラナイシラナイシラナイ」



ーーそれなら今日は記念すべき初体験だね。



「ハツ、タ、イケ、ン……」



ーー大丈夫大丈夫。ちゃんと気持ちよくしてあげるから。



「キモチ、ヨク……」



ーーそれじゃ、そろそろ始めよっか。



「ン”あ”ッ……!あ”あ”あ”ッッッ……!?!!!」











「…………ありがとう」



そこに居たのは前髪パッツン黒髪ロングストレートの普通の少女であった(ただし全裸)。


雰囲気はちょっと陰キャオタクっぽい喪女だが、特に珍しくもない何処にでも居る少女だった。



「……こんな、わたしを、あいしてくれて」



少女は色を失っていく。消えるように全身が薄くなって、透けていく。


昇天(絶頂)した少女が昇天しようとしている。


微笑んだその表情には僅かばかりの後悔が滲み出ていた。


まだ言いたいことがあるーー少女は口を開きかけたが、声は出ない。


一瞬の逡巡の後、何かを諦めた表情で少女は口を噤み言葉を飲み込んだ。



「さよなら」



震える声で呟いて、少女は消えていく。



「逃がさんっ!」


「ふえっ!?」



こんなこともあろうかと用意していたのさ!


この黒髪オカッパの市松人形をなぁ!


市松人形を少女に向かってぶん投げるとアラ不思議。少女の霊は市松人形の中に吸い込まれていく。


市松人形の中に少女が全部収まったのを確認し、仕上げにしめ縄で亀甲縛りにして封印完了。



特級怨霊ゲットだぜ!


















〜おまけ〜



「やあ、ボクは天使のシアリース!」


「ぽぽぽ」


「私は赤崎玖音……ーーって、天使!?本物!?天使って実在したのッ!?」


「勿論、ボクは本物の天使さ。ほら、ちゃんと光る輪っかに翼もあるよ!」


「わー、本物だぁ(にゅるにゅる)」


「くっ、んあっ……触手が絡みついて……!んっ、そこ……だめぇ……!」


「あっ、ごめなさい。つい」


「ぽぽぽ」













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