触手の異形




路地裏にタコっぽい謎の異形が落ちていた。



学校からの帰り道。俺の第六感が人ならざるモノの気配を感じたような感じてないような気がした。まあ、気まぐれなんだけど。


その第六感に従って道を外れて人通りの少ないーーというか、全く気配が無い路地裏へと足を踏み入れる。


そこでタコっぽい明らかに関わってはいけないタイプの正体不明の謎の生命体とエンカウントしたわけである。バトル開始ィー!


様子を伺う。


ウネウネとタコっぽい生き物は蠢いている。


色は明らかに毒がありそうな紫色。


タコっぽいといっても、それはタコのような吸盤付きの触手が無数にあるからだ。その触手が絡み合って球体のようになっている。


タコっていうよりはアレだ。ポケ○ンのモン○ャラっぽい。ただそれにモ○ジャラのような愛嬌は存在しておらず生体兵器のように禍々しい。出演作はポ○モンじゃなくてバイオ○ザードって感じ。




「ハイダラァッ!」


「ぐべっ……!?」




とりあえず力の限り蹴り飛ばしてみた。


べチャリと音を立てて触手の塊は壁にへばりつく。




「急に何するのよッッッ!?」


「えっ、普通に喋れるの?」




あろう事は触手の塊は普通に人語を扱えた。扱う言語は日本語だが、その声はノイズがかかったように不快感満載の黒板を引っ掻いたような音だった。どっから音が出てるのかはさっぱり分からんない。




「ホントありえないんですけどッ!」


「ごめんごめん」




触手の塊は不満を垂れ流しながらウネウネと蠢いて壁を這い地面に降り、地面を這ってコチラに近づいてくる。




「で?アンタなんなのよ」


「通りすがりの者です」


「そっ。じゃあ私のことは見なかったことにしてサッサとどっか行きなさいよ」




触手の塊は突き放すようにそう言って、シッシッと追い払うように触手を動かした。あの触手が手なのだろうか。




「つかぬ事をお聞きしますが。もしかしてアナタは女の子だったりします?」


「は?それ聞いてなんになんのよ。まっ、一応、女……ーーだったわ」




……ほう?この触手の塊……メスか。




「確保っ!」


「ちょっ!?あ、アンタ急になんなのよ……!や、やめろッ!離しなさいよッ!?くっ、この……!絞め殺すわよッッッ!?」




と、言うことで。俺は触手の塊を自宅に持ち帰った。











ーー名前は?



「……赤崎あかさき玖音くおんよ」



ーーどこから来たの?



「…………どっかの研究所。そこからーー逃げだした」



ーー歳いくつ?



「研究所に連れていかれたのは15歳の時。そこから何年経ったか分かんない。多分、成人はしてると思うわ」



ーー研究所では何してたの?



「知らない。なんかの人体実験。私はそこで実験材料にされた。学校からの帰り道で……誘拐されて……それから……全身を弄り回されて……。気がついたら……こんな姿になってた……」



ーーどうやって研究所から逃げ出したの?



「……なんか事故があったみたい。そのどさくさに紛れて逃げ出した」



ーー路地裏で何してたの?



「なんにも……。逃げ出したはいいけど……私、こんなだし。家にも帰れない。行くところなんて無い。でも、研究所には戻りたくない。だから……途方に暮れてた……」



ーーこれまでの男性経験は?



「はぁあ!?き、急になんなのよッ!?」



ーーしたこと、ある?



「な、無いわよ……!まあ、人間だった時の話……って言うか、この身体で……そういうこと出来ると思う?馬鹿なんじゃないのアンタ……」



ーー恋人は居た?



「それ聞いてどうすんの?なんか意味あるの……。いや、居なかったけど……仲が良かった幼なじみは、居たけど……」



ーーその幼なじみのこと、好きなんだ?



「……分かんない。ずっと一緒で、姉弟みたいで、家族みたいで……。それも、もう……こんな身体じゃ……会えない……会いたくない……今の姿……見られたくない……」



ーーなら、その幼なじみのことは忘れちゃおっか



「忘れる……。そう、ね……。全部、忘れて……それで、この姿で……この姿で、生きて……。生きていくの?私、このままずっと、この姿で……生きて……いくの……?」



ーー楽になりたい?



「…………………………………………死にたくない」



ーーなら。その姿のまま生きていくしかないね。



「…………元の身体に、戻れ……ない、かな?」



ーー人としての原型が全くない。おそらく無理だね。



「そっ…………かぁ…………」



ーー全部、忘れさせてあげるよ。



「…………え?」



ーーそれじゃ、そろそろ初めよっか。



「は?」











目を覚ますとタコ足の様な吸盤付きの触手が全身に絡みついていた。玖音ちゃんのだいしゅきホールドである。ういやつよ。



生命の神秘。



玖音ちゃんの身体を調べた結果。触手の付け根の部分に口と思われる部位を発見した。どうやらここから声を発していたらしい。



穴がある。後は、分かるな?



吸引力が凄かった。以上!












〜おまけ〜



「初めましてボクは天使のシアリース。キミは?」


「ぽぽぽ」


「ふむ。ぽーちゃん様か。いい名前だね!」


「私って……綺麗?」


「ふむ。難しい質問だね。天使的には小さい=可愛いいだからなぁ……。ぽーちゃん様はデカすぎるね。ボクよりデカイ。つまりボクの方が可愛いというわけだ!」


「ぽぽぽぽぽぽぽぽ」


「うわっ!?ちょ、何するんだ!?羽を毟らないでくれ……!あっ、あああぁぁぁぁぁッッッ!?!!!」









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