第9話 烏森 蓮
私は
混世大災以降。地球と混ざった星の影響で、異世界の特性の一つで、人類は自分に向いている職業が解る様になった。
それを人々は【天職】と名付け、呼ぶ様になり。私の天職は
勿論、やりたい事と違う人もいる。
天職とは別の道に進む人もいる。
持っている才能を捨てて違う道を進む様なものだから、いっそうの努力が必要になるし、何より向いていなかったりする。
どちらの道を選ぶのか、それは個人の自由。
私の天職
正直、危険なダンジョンでの仕事は気が進まなかった。
けれど今の世の中、ダンジョンは切っても切り離せない生活の一部であり。何より、食うに困らない稼げる仕事。
運もついてきたのなら、本当に一攫千金も夢じゃない仕事。
私には病気の弟がいる。
自分の生活に、弟の入院代や治療費を稼ぐ為には。危険は伴うけれど、ダンジョン業を生業とできる天職だったのは良かった。
そう、思った。
弟の病気を治せるアイテムも、手に入る可能性があったから。
困らない程のお金を手に入れる。
弟の病気を治せるアイテムを手に入れる。
それが達成できたのなら、私は
探索者訓練校時代からずっと、
攻撃系統
ダンジョンは奥へ進めば進む程、モンスターが強くなっていく。単独では倒せなくなってくる。
私にはそれが、モロに当てはまった。いや、当てはまるどころか。それ以下だった。
私には攻撃系統
ダンジョンのスタート地点近くにいるモンスター、その程度くらいしか倒せない。
となると必然。ダンジョンを探索する時は
一攫千金の夢は遠退いた。
けれど私には、攻撃系統の
おかげで、
全く闘えない
私は、真面目に取り組んでいった。
おかげで、今では国内の探索者
上位
このまま。昇格し続けていけば大金を手に入れる事も夢じゃないと、弟の病気も治せると、そう思った。
その矢先。
私は
初めての大きな失敗。
依頼主兼幼馴染の、
上位
でも、どこかで油断していたのだろう。
私はいつもの様に、探索者
久々に会った彼女は、私と同様に探索者になっていた。
お互いに近況報告や世間話も兼ねて、色々と話をしてみると。
彼女の天職は
彼女が
依頼内容はダンジョン探索の最高難度に設定されている
場所は中層手前の上層付近、そこ迄奥深くへと潜る必要はなく採取が可能との事。
私は考える。
私より上の
最高難度のダンジョンとは言え、上層ならモンスターに出会ったとしてもまず問題はないはず。
中層以降には行かずに済ませられる依頼の様だし、採取と言う事は。先導役次第では、モンスターと闘う事なく終えられる可能性だってある。
私も昇格して、今は
諸々加味して、私には危険よりも利点の方が大きいと感じた。
それに何より。困っている幼馴染を放置する事なんて、私にはできなかった。
私はカノンに
他の
ていうか、私が声をかけまくって集めた。
自分の、戦闘においては全く力になれない理由もしっかりと全員に伝え。カノンと予算の相談もしつつ、安全には余裕を持ってダンジョンに臨む。
準備が整うと、私達は神魔の迷宮へと探索に向かった。
後少しで目標地点に到着する、その時だった。
私は罠として隠されていた魔法陣に、見事に引っ掛かった。
ここ迄の道中。最高難度のダンジョンだと言われているのに、いつものダンジョンと大した違いが特になく問題なく来れた事。
後少しで、目標地点だった事。
上位
それ等全てが、罠に引っ掛かる事態を招いたんだと思う。
いつもなら、念には念を入れて。そこへ更に念を入れてチェックするのに。
一つ目の罠には気づいて解除をし、二つ目の罠にも気づいてそれも解除した。まさか、三重の罠だったなんて。
二つ目の罠を解除した際に、私は何故かチェックを怠った。
いつもなら、しないミス。
完全に慢心した。
完璧に油断した。
絶対に、私の失態だった。
罠の魔法陣は転移の魔法陣だった様で、私の近くにいて助けにきてくれたカノンを巻き込み。私達は転移した。
転移した場所は、神魔の迷宮について調べた情報と合わせると。深層と呼ばれている場所に、似ている気がした。
その情報も古い情報なので違うのかもしれないけれど、私は希望的観測を捨て最悪を考えるべきだと判断する。
此処はきっと、神魔の迷宮深層だ。
ひとまず。私達二人は落ち着いて、冷静に行動する。
私の
近くにいる。
しかもそのモンスターは、私の
速度からして、逃げるのは難しい。
現れたのは、見た事のない恐竜型モンスター【イビルラプトル】。
一匹、二匹、三匹と増えていく。
私はカノンを連れて逃げた。
案の定、追いつかれて逃げられない。
「カノン。お願い。魔法で追い払って!」
「いやっ!死にたくない!」
「カノン!」
今迄のカノンからは聞いた事がない大きい声が、洞窟内に響く。
「カノン!」
「いやっ!いやっ!」
見た事のないモンスターの迫力に怯えるカノンには、魔法を唱える余裕なんてなかった。
私は、迫力なんて気にしていられなかった。
必死に考えを巡らせる。
こうなったのは、罠を解除し損ねた自分のせい。
私が死ぬのは仕方がないと思う。
ただ、私を助けにきてくれたカノンだけは。生き延びて欲しかった。
そう覚悟を決めた時、弟の顔が浮かんだ。
「残して、一人にしちゃって。ごめんね」
目にはいつの間にか、涙が溜まっていた。
襲いかかる為に、モンスターが足を踏み締める。
来る。
「カノンを逃げられる方向へ、突き飛ばす隙くらいはあるはず。無くても作る。何とか、逃げきるんだよ」
そう小さく呟いたその時、モンスターは自分達とは違うあらぬ方向へと吹き飛んでいった。
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