第8話 ストレス発散
最初に現れたモンスターは、蛇型モンスター。十体はいるか。
俺はすかさず、相手に【鑑定】の
新しく知った三種の
[ナイトメア・ヴァイパー]
今更に、見知ったモンスターの名前を知った。
随分と厳つい名前だったんだな。
モンスター同士の縄張り争いの際、コイツが毒牙持ちなのは確認済み。他に特徴があるとすれば、標的に音も無く近づいてくる事。
今なら気配が察知できるから、音も無く来られても問題ない。更に言えば。
「ガグァ」
一体のナイトメア・ヴァイパーが口を広げて襲い掛かってきたところに、俺は【自己強化】した腕を突っ込んだ。
「牙が通る事は、ない」
ナイトメア・ヴァイパーの毒牙は、強化した俺の皮膚を貫く事はなかった。
毒自体を目や口に入れない限りは、大した問題にはならない。万が一毒が回ったとしても、【自己強化】で毒に対する抵抗力を高めれば死にはしない。
口に突っ込んだ腕を引き抜き、瞬時にその引き抜いた拳を頭に打ち抜く。ナイトメア・ヴァイパーの頭は吹き飛んだ。
直ぐ様移動し、他の奴等の頭にも拳を叩きつけていく。
ドロップアイテムが幾つか落ちた。
次のモンスターが来ているので、動きながらでも【異空間収納】の
「こいつは、練習しないとだな」
何個か回収し損ねた。
失敗した
俺は次に現れた鉱石型モンスターに目を向ける。【鑑定】。
[レジストミー]
抵抗する者ってか?
それならその抵抗力、いつも通りにぶち抜いてやる。
背後には更に熊型モンスター。こいつは珍しい。熊型は熊型でも、滅多に見かけない
[マリオネット・スパイダー]
おっと、こいつは驚きだ。
熊型モンスターだと思いきや、蜘蛛型モンスターらしき名前が出た。スパイダーと名前が表示されたから、まず間違いないだろう。
「ひょっして。骨系のモンスターは全部蜘蛛型モンスターが操ってるのか?」
その時、蜘蛛型モンスターらしきものはいつも確認できていなかったのだが。
ひょっしたら、骨を粉砕しまくっている拍子に一緒に潰していたのかもな。
稀にだが。骨なのに糸のドロップアイテムが何故か出たりしていた理由は、そういう事だったのか。
と、なると。
俺はレジストミーを砕きながら、目を凝らして熊の骨を隅々まで見てみる。
「おっ。いたいた」
頭蓋骨と関節の幾つかに、蜘蛛が見えた。かなり小さい。
通りで気づかない訳だ。
一体につき何ヶ所か蜘蛛がいるのに、ドロップアイテムが希だった理由は。ひょっとしたら司令塔役が頭蓋骨にいて、そいつが死んだ時点で他のは散り散りに逃げていたからなのかもな。
だから、いつも複数体いたとしても倒してたのは一匹だけだった。って、感じか。
少し離れた場所で。イビルラプトルと、狼型モンスターの[ウルフレイア]が群れで争いだしている。
ウルフレイアは、炎を弾として撃ちだしてくる
遠距離攻撃もしてくる相手だ。
対策は。炎を撃ちだしてくる前に倒してしまうのは勿論、後は群れの仲間に被弾する可能性を作ってしまう事。要するに、常にウルフレイアの一匹と近接戦闘をしていれば打ってこない。
偶に『俺に構わず、奴に炎を撃ち込んで始末しろ』的な、漢気溢れる
近接戦闘を始める前に群れで炎の弾を撃たれた時は、逃げるしかなかった。
イビルラプトルもウルフレイアも、どちらも群れで標的を襲うタイプ。
モンスターの数が増えてきた所為で俺を見失い、標的を間違えている感じか。
「おいおい。こっちだろ、獲物は」
レジストミーは倒し終わった。
来た順番に。次はマリオネット・スパイダーを相手にしようと思っていたが、変更する。
俺はイビルラプトルとウルフレイアの群れが牽制し合っている間に、割って入る。
すかさず。近くにいた両種のモンスターを一匹ずつ、頭を打ち抜いて倒す。
仲間を倒された事で、両種共に
俺は更に、【自己強化】を発動。
より速く、より強く、より頑丈になる様に。
一撃で。爽快に。
俺の【自己強化】
単純で、応用の効かない
ちょっと変わったところがあるとしたら。制限がある
此処のダンジョンに入ってからは、
さすがに無限に強化とはいかないと思うが、どうなんだろうな?
前方には左にイビルラプトル、右にウルフレイア。後方からはマリオネット・スパイダーが迫ってきている。
ウルフレイア寄りに攻撃をしつつ、全員殺す。
「オラ、オラ、オラァ!」
問題なく戦える。
問題なく殺せる。
俺はモンスターの集団を相手に、無双できていた。
ずっとダンジョン内をビクビクと移動し、モンスターを観察し、必死に闘って生き延びてきた。
その集大成と言わんばかりの経験と知識を使って、続々と現れるモンスターを薙ぎ払っていく。
「ふう、こんなもんか」
物理攻撃が効かないモンスターが出た時は、正直焦った。
調子にのり過ぎたと反省しつつも、閃いた作戦を実行。それが上手くいって問題なく倒せた時は、一安心したもんだ。
今迄は多種多様なモンスターと同時に闘った事が無かった為、使った事のない方法。今回の様な時にしか使えない作戦。
それは、他のモンスターが放つ魔法を利用して倒す事。
俺は魔法が使えない。
逃げるしかないかと思ったが、そこで気づいたレンとカノンの存在。
二人には作った洞窟に隠れてもらっているが、モンスターの集団がいる場所に放置してしまう事になる。
担いで三人で逃げても良かったのだが、入り口を集団で塞がれたら厄介だ。三人が無傷で無事に逃げるのは、難しくなる。
よって、危険な為できない。
逃げられない、自分のせいだから仕方がない、と。更に覚悟を決めて闘った。
あの時は危なかった。
モンスターの残りも、後僅か。
怒りの方は多少落ち着いたとはいえ、まだ残っている。
「後は―――」
残っていたモンスターをきっちり片付け、他のモンスターよりもだいぶゆっくりとこちらに近づいてきているモンスターの方向へと視線を送る。
「次のモンスターで
最後になる相手には怒りのありったけを、ストレス発散に今出せるパワーのありったけをぶつけさせてもらう。
俺は更に【自己強化】を使い、身体能力を上げていく。
しかしこのモンスター、何かがおかしい気がする。
気配が薄いと言えば良いのか、小さいと言えば良いのか、何と言うのか。
他のモンスターと違って、異質さを感じる。
何か。いつもと違う怪しい雰囲気を感じていると、視界にはその気配からは想像出来ないモンスターがゆっくりと現れた。
「コイツは……でかいな」
初めて見る亀型モンスター。
今迄見たモンスターの中でも、かなり大きい。
[リビング・タートル]
「ハハハッ。良いね」
圧巻の巨体が持つ雰囲気に、若干汗をかく。だが、ストレス発散にはちょうど良いと。俺は強気に、拳を握り直した。
さあ、立ち向かうとしよう。
一気に。モンスターとの距離を詰め様と、駆け出す構えを取ったその瞬間。
レンの声がダンジョン内に響いた。
「ストップ!ストッープ!」
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