第5話 三種の能力
「何時からこのダンジョンにいるんですか?」
「えー、っと」
俺は
迷子になってからの記憶が曖昧な事や、最近になってから様々な事を考えたり思い出せたり出来る様になってきた事も、全て伝えた。
「シンさん、自己紹介の時に探索者って言いましたよね?」
「あ、ああ。俺は探索者だよ。今、登録カードを……」
い、いかん!今の俺は、何も持っていない。
もしかして。まだ俺を詐欺師や嘘つき、露出狂の変態だとでも思って怪しんでいるのか?
身分を聞いてきたという事は、その可能性がある。
やばい。
実際俺は本当の事を話してるし、嘘もついていない。しかし身分を証明してみせろと言われると、何も証拠がないし証明ができない。
このまま不審者扱いでこの二人にダンジョンの外に行かれては、俺が出た時には結局
い、嫌過ぎる。
ここは何としても身の潔白を証明しなければ!
しかし。一体どうすれば……。
待てよ。
今直ぐの証明は不可能だが、俺はちゃんと探索者として登録して
このダンジョンに入る前、確かに俺は探索者
探索者
あれが偽物だとか、存在してないとかはないはずだ。他の人達も、確かに登録していた記憶がある。
「待ってくれ!登録カードはないが、俺は本当に変な奴でも不審者でもない!嘘もついていない。外に出れば探索者
焦りからか、少々早口になってしまった。
ちゃんと伝わっただろうか?
「いえ。あの、そうではなくでですね」
何だ?何が違うと言うんだ?
「職種を言う時に探索者と言われる方、今ではもう滅多にいないんですよ」
「えっ?」
いや。探索者を探索者以外、何て言えば良いんだ?
何という事だ。俺がダンジョンで迷子になっている間に、呼称が変わっていたと言うのか。
だとしたら、二人が不思議に思うのも無理はないか。
「ひょっとしてなんですけど。私の
「あ、ああ。確かにその通りだ」
自己紹介でそれを聞いた時は、確かに何の事を言ってるのか解らなかった。
新しい職種かな?程度には予測してたけど、確証はなかった。
「更に質問させてください」
「あ、ああ。構わない」
「【鑑定】、【異空間収納】、【言語理解】。この
ガガガガー。
レンが指を三本立てていく横で、それに合わせる様にカノンが地面に字を書いていく。
昔の、ファンタジーで得た知識で大丈夫だろうか?
「読んで字の如くで良いのなら。【鑑定】は対象の情報を読み取ったり、真贋の判断ができる能力って感じかな」
「はい。概ね合ってます」
次。
「【異空間収納】は。今いる空間とは異なる空間を、アイテムや荷物を仕舞える収納空間として使えるって能力だと思う。漫画とかで描かれてたみたいなやつ。何か今、懐かしい漫画思い出したわ」
「……ん」
身振り手振りも混じえて伝える。
カノンが頷いたので、多分合っていたのだと判断。
次。
「【言語理解】は勉強とかしなくても、翻訳無しでも、自分の使用している言語以外の言語が何でも理解できる様になる能力。かな」
「そうね。それもまあ、合ってる」
おお。合ってて良かった。
で、これが何なんだ?
「レンさんの
三つもあるなんて、羨ましい。
「いえ、違うわ」
「えっ。じゃあ」
カノンの方に視線を送ると、首を横に振っている。
カノンのでもない。
えっ?じゃあ、何?
何で聞いたの?
「この三つの
「はい?」
全員?
えっ?俺にも?
「やってみれば解るわ。
「わ、解った」
言われた通りに、試してみる。
手に石ころを取って。
「【鑑定】」
[神魔の迷宮・深層の石]
「うぉっ!本当に使えた!」
ゲームとかによくある、コマンド画面の様な表示が浮かび上がった。まるでVRを体験しているみたいだ。
新鮮で楽しい。
「不思議な感覚だ。面白い」
「【三種の
俺の感想を余所に。レンは顎に手をやり呟きながら、カノンを見た。
「……ん。多分、そうじゃないかな」
「だよね」
何だ?二人で話合いを始めたぞ。
まぁ、別に良いけど。
とりあえず。俺は手持ち無沙汰になってしまったので、徐々に近づいてきているモンスターの方を待ち構える事にしよう。
手に持っている石に更に追加で、適当な石を拾っていく。
近づいてきている気配の動きがさっきの恐竜型モンスターと同じだから、同じヤツだろう。此処ら一帯は、アイツらの縄張りなのかもしれない。
今回の数は六体。一番後ろのはヤツは、他のと比べて大きそうだな。スピードが少し遅い。
俺はスタスタとモンスターが現れる方向へと、一人進んでいく。
「ちょ、ちょっと。どこ行くの?」
二人から離れだした俺に気づいたレンが、慌てて問いかけてきた。
「大丈夫。どこも行かないよ。ただ、ちょっとモンスターが来てるから相手をしようと思って。二人は気にせず、そのまま話をしててくれ」
「そ、そう。わ、解ったわ」
「ん……ん」
驚いた表情で、二人は返事をする。
「でも。一人で無理そうなら、私達にもちゃんと声をかけてよ。援護くらいならできるだろうから」
「ああ、ありがとう。その時はお願いするよ。レンさん達の方も念の為、話しながらでも気だけは抜かない様に」
俺は二人に軽く手を降り。向かってくる恐竜型モンスターが見えてきたところで、石の投擲を開始した。
勿論、力を思い切り込めて。
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