第4話 始まり
昔々。
『やあやあ、初めまして。地球に存在している知的生命体のみんな。僕は君達が呼ぶところの神様?みたいなモノなんだけど、僕の言葉が解るかな?』
その声は突然、全世界の人類の頭に鳴り響いた。
知的生命体と表現していた辺りを踏まえると人類以外にも、その言葉を理解していた存在には同じ事が起こっていたと思う。
『まっ。解っていてもいなくても、信じても信じなくても、僕は告げるだけさ。好きにすると良いよ』
神様と名乗った何かは、淡々と話を進めていく。
『もうすぐこの星。地球って君達が呼んでる
お告げの内容。それは人類滅亡どころか、地球消滅。
『ただ。それをすると、今とはだいぶ環境が変わってしまうからね。君達は救われるけど、苦労も共にする事になる。勿論、良い事もあるとは思うけれど。それをどう感じるかは、君達次第。って、それは今と大して変わりはないのかな?ハハハッ』
神と名乗る何かは軽快に笑った。
『君達が、選ぶと良いよ。僕としてはどちらでも良いからね。ああ、ただの気まぐれだから。救われるチャンスがもらえたお礼とかは、気にしなくて良いさ』
何だ?「わざわざ気にかけていただいて、ありがとうございます」とでも、言うと思っているのか?
誰もそんな事、思わないだろう。
お前はどちらでも構わないと言った。という事は、そもそもどうでも良いと思っているとしか思えない。
『聞きたいのは、このまま消滅するか。まだ生きていたいのか。僕が知りたいのはそれだけさ』
今だって、生きてるだけで喜びも苦労もある。今後もそれは生きている限り、変わりはしないだろう。それは環境が新しくなったところで、同じだと思う。
それに。人類は昔から、環境の変化に適応してきた生き物だ。きっと新しい環境になっても乗り越えていけるだろう。
だから、今考えるのは単純に。“まだ”生きていたいのか、“今”死んでも良いのか、それだけの話。
確かに、その通りだ。
神と名乗る何かの話に共感をしながら、俺はまだ死にたくない。生きていたい。と、強く思った。
苦労や嫌な事はあるだろう。それでもきっと“好き”に向かって生きていけば、幸せを感じ楽しく生きる事だってできるだろう。
だから、俺はまだ生きていたい。
死にたくはない。
『五月蝿いなぁ。質問全部に、いちいち答えてられないっての。文句言う奴は、今直ぐ死んでもらうよー。あ、後。決め方は多数決。はい、後五秒で決定するからねー。五、四、三―――』
神と名乗る何かが、何かを愚痴っている。
きっと誰かがSNSばりに、クレームでも入れているんだろう。
誰かは知らないが凄いな。一応、神と名乗っている存在だぞ。
『二、一。はい、決定ー!生きたい意見が多いみたいだし、混ぜちゃうから。これでこの星の消滅はなくなるから、安心して。頑張って生きていくんだよー。じゃあ、またがあればまたねー』
神と名乗る何かは、最後の最後まで軽快に。去っていった。
地球が別の星と、別の世界と。所謂、異世界と混ざってから変化した事。
地球には、世界には、日本には、迷宮が存在していた。
迷宮の中には金銀財宝、資源、今までにはなかった未知の物質があり。それは人類にとって、まさに宝の山で。それらは迷宮の奥へ行けば行く程、より貴重な物が発見されるのが解った。
人類はそれらをアイテムと呼び、迷宮自体をダンジョンと呼ぶ様になった。
そして。ダンジョンに棲息する未知の生物も発見され、中に入った者を襲う習性がある事が解り。それらはモンスターと呼ばれる様になった。
他にも。人類自身にも、変化が生まれていた。
今迄は非現実でファンタジーとされていた、映画やアニメ、漫画、ゲーム等々。想像の、創作の世界にしかなかったモノ。特殊能力や超能力と言ったモノが、全員に備わっていた。
それは
因みに。ダンジョンの探索で生計をたてる者を探索者と呼ぶ様になり、立派な職業として扱われる事にもなった。
戦争がなくなったのに犯罪がなくならないのは、人間の悲しい
そんな中。日本は国内に生まれた大型のダンジョンの一つに的を絞り、大勢の探索者を募った。
大型ダンジョンなのだから豊富だろうと予測した大量の資源回収と、今後の為のマッピング、そしてできる限りダンジョンの奥にある未知のアイテムの回収が依頼内容。
報酬は悪くない。
俺はその時に集められた、寄せ集めの能力者集団の一人だった。
高校を卒業し、就職もしないでフリーターでアルバイトの日銭稼ぎ。稼いだ金は友達と遊ぶ為に使うだけ。
そんな時、例の神と名乗る存在が出現。
それからダンジョンが生まれて、
そこに降って湧いた大型ダンジョンの探索に、俺は飛びついた。
殆ど初心者にも関わらず。
思えば、ちゃんと考えてから決めるべきだったんだ。
大型のダンジョンなのだから、一人で挑むのは厳しとか。ちゃんと自分の
大勢の人間がいたからと言って、それは俺の仲間ではなかったんだから。
勘違いしていたんだ。
後はダンジョンに入って軽く探索をしていたら、突然洞窟が変化して迷子になった。それから長い時間、彷徨って今に至っている。
そんな俺が、レンの質問に答えられるだろうか?
初心者が、ただ
二人の装備を見る。
どう見ても、レンとカノンの方が俺よりも経験豊富な探索者にしか見えない。
「シンさんは―――」
口を開いたレンに、俺はどんな質問が飛んで来るのかとドキドキしてきた。
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