第19話 努力の賜物



「…さすが、東雲だな」


今日は試験結果の発表で全校生徒の50位以内に入る成績を持つ生徒は合計点数と名前を合わせて、学校の大きな広報掲示板に貼り出される。


1年生のうちは11教科のため、合計点の最大が1100点だった。


この日の昼休みは後方掲示板にわぁっと生徒が集まり順位を確認する。


「…東雲さんすごいね。」

「…東雲様、まただよ」

「…俺入ってねーや!」


生徒の色々な声が聞こえる。

7割ほどが茉白の話をしていた。


それもそのはず、


東雲茉白 1位 1069点

佐藤樹  2位 995点

藤山佳織 3位 992点


茉白は2位と大差で今回も学年一位だったからだ。


結仁は期限の切れた要らない貼り出しを取って捨てると言う、学級委員の仕事のついでに見る。


あまりにも人が多すぎるので、結仁は人が掃けて少なくなったのを確認し最後の方に見た。


結仁の結果は…


上田結仁 31位 936点。


悪くない結果であった。


(前回より10位くらい上がってるな)


不意に涼の順位が気になり探してみると、


永野涼 29位 942点。


涼も上がっていた。

しかし、比べると6点差で2位しか変わらない。


結仁は小さくガッツポーズを決め、仕事に取り掛かろうとすると隣には茉白がいた。


茉白も自分の順位を確認して、少し笑顔になっていた気がした。


結仁は茉白に話しかける。


「よっ東雲。また1位だなんて…それも大差で、すごいな。おめでとう」


「そんなことないですよ。上田くんも順位アップおめでとうございます」


茉白は結仁にニコッと笑いかけた。


「上田くんは今から何を?」


可愛らしく首を傾げながら聞いた。


「あぁ、ここの掲示板の要らない掲示物を剥がして捨てて欲しいって学級委員で頼まれて…」


「じゃあ、私も手伝いますね!」


茉白は言うとすぐに取り掛かった。


「早く取らないと、私に全部取られちゃいますよっ」


茉白はゲーム感覚なのだろう。


そんな遊び心満載な茉白の笑顔は今日も星のように輝いていた。


「はいはい、分かったよ」


結仁は微笑むと作業に取り掛かった。


この学校の掲示板は無駄に大きい。


テストの範囲、イベントの告知、授業の確認事項、課外学習の招集、委員会係からの連絡などなど様々なジャンルの掲示物が貼られている。


その中から掲示物の内容の日程が過ぎているものを剥がすのだ。


「…後夜祭の開催予定、学園祭のやつか。1ヶ月以上も前じゃねーか…」


無駄に広いせいか整理がなかなかされていない。


今まで新しく貼られても気づかないこともあったりと、この掲示板の紙の多さには困っている人もいるであろう。


「上田くんっ!」


少し離れた場所で壁に寄りかかりながら背伸びをしている茉白。


「この上のプリントっ…!取ってくれませんかっ」


「はいよ」


そう言って結仁は少し上に伸びるとプリントを軽々と取った。


「おぉー、さすが上田くん」


それを見て茉白は感心したように言った。


「まあな」


胸を張って自慢気に言う結仁。


そんなやり取りに二人は少し笑った。


「なんか、学校で東雲と話すと新鮮だな」


「それは私も思いました。学校で話すとまた違いますね」


茉白は剥がし取ったプリントを結仁に渡しながら言った。


「プリント、多分これで全部だと思うので」


「ありがとうな、東雲」


「どういたしまして」


結仁は受け取ったプリントをまとめると、


「じゃあ、俺はこれを処分して報告しに行くから。また後でな」


結仁はそう言って歩き出した。


「はい。また後で」


茉白も自分の教室に戻って行った。




------




放課後。


結仁は用事があると涼と志穏に伝えると、一人で帰路についた。


結仁は茉白への感謝の気持ちを形にしようと、学年一位のご褒美としてケーキを買うことを決めた。


彼女の笑顔を思い浮かべながら、結仁は駅前にある評判のケーキ屋に向かった。


ケーキ屋の前に到着すると、店の中から甘い香りが漂ってきた。


結仁はドアを開け、店内に入った。


ショーケースには色とりどりのケーキが並び、どれも美味しそうに輝いていた。


「いらっしゃいませ!」


店員が明るく声をかけてきた。


結仁は少し緊張しながらも、ケーキを選び始めた。


(茉白が喜びそうなケーキはどれだろう…)


結仁はショーケースを見渡しながら考えた。


ふと、目に留まったのは、フルーツケーキだ。


色鮮やかなフルーツが美しく並び、見るだけで涎が出るほど美味しそうなケーキ。


「これにしよう」


結仁は店員にショートケーキを指さして注文した。


「こちらのフルーツショートケーキですね。お包みしますので、少々お待ちください。」


店員が手際よくケーキを包んでいる間、結仁は店内を見渡した。


ケーキ屋の温かい雰囲気が、どこか心を落ち着かせてくれる。


タルトにモンブラン、ショコラケーキ、ホールケーキ…


その他にも様々なスイーツが並び、評判が良いことがひと目でわかるほど、どれも食欲をそそるものばかりであった。


そんなことを思っていると、


「お待たせしました。こちらがご注文のケーキです。」


店員が笑顔でケーキを渡してくれた。


結仁は感謝の気持ちを込めて受け取り、店を出た。


(茉白、喜んでくれるといいな。)


ケーキを大事に抱えながら家に帰った。


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